このままではアメリカは世界のイノベーション競争の敗者となり、スタートアップ国家としての地位を中国に奪われてしまう──。Caseがそう述べたのは、今回が第一回となるフォーブスの「Top 10 Rising Cities For Startups(スタートアップが増加中の10都市)」リストの公開に合わせてのことだ。本リストの立ち上げの目的は、シリコンバレーやニューヨークなどの伝統的なスタートアップ都市以外の企業への、VCの投資を促すことにある。
「今回のフォーブスのリストをきっかけにして、米国のより多くの都市に資金が注がれることを期待したい」とCaseは述べた。
ピュー研究所のデータによると、現在75%の米国人が将来に対し不安を抱えているという。また、72%の米国人が、機械に人間の仕事を奪われることを危惧しているという。「テクノロジーが人類を脅かすと考える人が増えている。未来に対して悲観的な考えを持つ人が多いのだ」とCaseは話した。
現在は「Revolution」のCEOを務めるCaseは、中国が急速な発展を遂げ、アメリカの覇権を揺るがそうとしていると述べた。「米国はイノベーション精神を持ち続け、多様な人々を新たなビジネスに取り込んでいく必要がある。さもなくば中国に敗退してしまう」とCaseは話した。
中国の投資企業「Sinovation Ventures」のCEOの李開復(Kai-Fu Lee)は、中国はかつての西側をコピーする時代を抜け出し、今や独自のイノベーションを進めようとしていると述べた。Caseとともに壇上にあがった李は、「中国はもはや米国を模倣する国ではない。彼らは野心的なゴールを描き、そこに向けて邁進している」と述べた。
李がその一例にあげたのが、アリババが今年4月に95億ドルで買収したフードデリバリーの「ウーラマ(餓了麼、Ele.me)」だ。ウーラマは中国全土の250都市で、20万軒以上のレストランから30分以内に食事が届くサービスを展開中だ。
米国は今、シリコンバレーに頼りすぎているというのが李の主張で、「もっと多様な都市から起業家を生み出すべきだ」と述べた。会場では不動産テック企業「Cadre」の若き創業者でCEOのRyan Williamsや、3Dプリンティングテクノロジー企業「Formlabs」の共同創業者のMaxim Lobovskyらが、世界の企業と提携を行っていくと宣言した。
しかし、李は「中国の企業カルチャーは米国とは全く異なるものだ。中国を第2のステップとして考えるのはやめたほうがいい」と彼らにアドバイスした。
Caseも特定のエリアでは中国が米国の先を行っていると発言した。人工知能(AI)領域だ。しかし、既に勝負がついた訳ではない。「我々は特定の国を相手にするのではなく、グローバル市場で勝ち残らねばならない」とCaseは話した。