ただし、「今後10年間にわたって経済成長を持続させるだけの十分な準備を整えた新興国」を紹介するこの報告書は、フィリピンがそうした国の一つとなるには条件があると指摘している。腐敗とインフレ、反政府活動が成長の持続を妨げないことだ。
「最有力」グループからは除外
新興国にとっての最大の課題の一つは、持続的な経済成長を数十年、あるいはそれ以上にわたって維持することだ。MGIによれば、成長に関する一定のベンチマークを満たしている新興国は、調査対象とした71カ国のうち18カ国のみだ。
ベンチマークを満たしたと見なされるのは、「1人当たり国内総生産(GDP)の成長率が過去50年間で3.5%以上、または20年間で5%以上となり、多くの国民が貧困から脱した」ことなど。18カ国に入るのは、中国、マレーシア、インド、ベトナム、エチオピア、ウズベキスタンなどだ。
この中に、フィリピンは含まれていない。1960年代に見られた高い経済成長率は、上述した同国と切り離せない3つの「悪」によって中断されている。
「期待値」は高い
ただし、それでもフィリピン経済は近年、非常に高い回復力を見せている。2017年第3四半期の成長率は前年比6.9%となり、2016年第3四半期以降で最も高い伸び率を記録した。今年第2四半期の成長率も6%となっている。
中国の2017年第3四半期の成長率は6.8%で、フィリピンは同期、わずかながらも中国の伸び率を上回った。ただ、中国にとってこの割合は、2016年第4四半期以降で最低の水準だ。
経済情報サイトのトレーディングエコノミクス(Tradingeconomics.com)によれば、1982~2017年のフィリピンのGDP成長率は、平均3.72%。1988年第4四半期には、過去最高となる12.40%に達した(最低を記録したのは1985年第1四半期で、マイナス11.10%となった)。
フィリピン経済はロドリゴ・ドゥテルテ大統領の就任以来、政府が経済成長の促進に向けて導入した幾つかの政策によって押し上げられてきた。安定したマクロ経済環境や税制改革、市場の自由化、インフラ整備への支出の増額などが成長に貢献している。
MGIが「持続可能な発展を続ける用意ができた新興国」のグループに入る可能性が高い国として、スリランカと並んでフィリピンを挙げたのは、これらが理由だ。ただし、それは当然ながら、フィリピン社会に依然として残る腐敗とインフレ、反政府活動によって成長が停滞することにならなければという条件を満たすことが欠かせない。
金融市場はフィリピン経済の見通しについて、懐疑的な見方を崩していない。その理由もまた、これらの問題点にある。