英国の聖地グッドウッドはポルシェ70年の轟音と速度で盛り上がる

毎日昼頃、ポルシェの70年のスポーツカーの歴史を祝うセレブレーションがあった。356、911、962、919などポルシェを代表する車がマーチ卿の邸宅前に集合




ヒル・クライムでは、すぐ後ろに付いてくるポルシェ・ヒーローのベル選手とローエル選手などの強者に、もっと速くとプッシュされているかのようでものすごく刺激になった。歴代ポルシェのスポーツカーとレーシングカーの先頭で、稀少な901を損なうことなく走らせることには、かなりプレッシャーを感じた。

運転に集中し、丁寧に変速して、セオリー通りのライン取りを守って走った。5万人以上の観客が名車の走りを見つめるなかで、運転の間違いは許されなかった。
 
生まれた時の状態に戻された901は、エキゾーストノートも走りも文句なし。内装も新車状態だ。年代物の細いハンドルとチェッカー付きのバケットシートは搭載されているけれど、新しいウッドと本革のトリムが付けられたため、室内は60年代の匂いはなく、21世紀の雰囲気。


 
電気制御のデバイスが1つも付いていないので、この901は運転しづらいと思われがちだが、その反対だ。ステアリングは多少重いけど、操作は正確。4速M/Tはきちっと入るし、130psを発揮する2Lエンジンは、期待していた以上に加速性が良くて、猫が満足げにのどを鳴らすような感覚で、気持ちの良い音と振動だ。
 
ル・マン優勝はどのメーカーよりも多い18回を誇るポルシェ。同社の博物館から運びこんだ名車も、来場した歴代優勝者も数多かった。そのうちの一人、71年優勝のヴァン・レネップ氏に話を聞いた。

「あの頃は、トラコンみたいな運転補助機は付いていなかったので、僕らは本当に丁寧に運転しなければ、すぐにコースアウト。当時は危なかったね」と振り返る。
 
でも、だからこそ、そこにはスポーツ・ドライビングの生なスリルがあった。この祭典で運転させてもらった901は、僕がこれまでに乗った何百台の中でもっとも車との一体感を感じ会話のできるピュアな走りだった。僕は、そういう車の原点を貫くポルシェを大いに賞賛せずにいられない。

文=ピーター ライオン

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