筆者は、デモで実際に心電図が作成される様子を目撃した。アップルウォッチの背面で手首の脈を図り、もう片方の手の指でデジタルクラウンを触れば心電図の作成が始まる。
心電図機能は米食品医薬品局(FDA)の認証を取得しているものの、心電図アプリはまだアップルウォッチに搭載されていない。その理由は、ソフトウェアがまだ完成していないからだ。しかし、デモで披露されたアプリはかなり洗練されたものに見えた。おそらく、アップルが主張する通り年内にはリリースされるだろう。
しかし、それまでの間は心電図機能を使うことはできない。これは、米国外でも同様であり、それぞれの国で承認を得るまで使うことができないのだ。
心電図機能が使えるようになるのは、一体いつのことなのだろうか? あるいは、心電図アプリは「ベーパーウェア」(完成する可能性のない幻のソフトウェア)なのだろうか?
この状況は、盛んに宣伝されながらいまだにリリースの目途がたっていないワイヤレス充電マット「AirPower」と似ている。「9to5Mac」のBen Lovejoyによると、しばらく時間がかかる見込みで、場合によっては数年を要するかもしれないという。
「Fast Company」によると、アップルがFDA認証を取得したのは、発表イベント開始のわずか数時間前のことだったという。その意味では、ソフトウェアの改良が必要なのは当然だと言える。アップルは、年内にアプリをリリースすると述べている。
AirPowerに関して言えば、筆者は数週間以内に正式な発表があると予想している。完成は間近で、間もなくリリースされるだろう。
一方で気になるのが英国における、アップルウォッチの心電図を取り巻く状況だ。Ben Lovejoyは、英国の医薬品・医療製品規制庁(Healthcare products Regulatory Agency、MHRA)に対し、英国で承認を得るための手続きについて取材をしている。
欧州ではドイツがまず認証か
それによると、手続き自体は複雑でないという。しかし、MHRAがアップルに対して医学研究の実施を要求した場合、CEマーク(EU加盟国の基準を満たすものに付けられる基準適合マーク)の取得に数カ月から数年を要する可能性があるという。
しかし、英国のユーザーには、わずかな希望の兆しがある。ドイツの心臓専門医がウェブサイト「Heise」とのインタビューで、アップルが他のEU加盟国より先に承認を取得する可能性を示唆したのだ。
医師によると、アップルウォッチは心筋炎や梗塞、循環障害の検知には適さないが、心房細動については95%の精度で検知できるという。別の心臓専門医であるThomas Meinertzは次のように述べている。
「個人的な経験では、ドイツの方がCEマークを早く取得できる。しかし、CEマークは製品が安全に機能することを意味するだけで、臨床的な有効性を保証するものではない」
もしドイツで承認されれば、全てのEU加盟国で承認されることになる。英国は2019年3月29日にEUを離脱する予定であり、その前にドイツでCEマークを取得できれば、英国ユーザーも迅速に心電図機能を利用することができるだろう。