評価の対象は、空気感染対策のための紫外線殺菌照射(UVGI)装置「エアロシールド」。このユニークな製品を生み出した同社が目指す「未来」とは。
「私は『空気環境』に対する世の中の意識を変えたいと思っているんです。これからは『安心できる空気環境』に対価を払う時代、空気環境を選ぶ時代が必ず来ると思っています」
エネフォレストの代表取締役・木原寿彦は真剣な表情でそう語る。
同社が開発した「エアロシールド」は、空気中に浮遊する細菌やウイルスを紫外線によって殺菌照射するための製品だ。サイズはティッシュボックスほどの大きさで、重さは約3kg。室内の高さ2.1m以上の壁面や天井に設置し、紫外線を水平に照射することで室内上部に紫外線の層を形成する。室内の空気は自然対流するため、空気中を浮遊する細菌・真菌・ウイルスが紫外線の層を通過することで殺菌照射される仕組みだ。
製品開発の着手は2006年。エネフォレストの前身・シールドテックの創業社長であり、電気技術者でもある木原倫文が始めた。その事業を大手流通業界から転身した息子・寿彦が引き継いだ。
新製品の開発を加速させたのは、「大切な家族のために」という思いだ。
「私の祖父が介護施設に入所して間もなく、施設では肺炎で亡くなる人が続いたんです。そこで施設内の空気を測定したところ、肺炎を引き起こす浮遊菌が予想以上に多く検出されました。抵抗力が弱っている高齢者の場合、環境からの菌を吸いこむと肺炎を発症して重篤化し、ひどい場合には死に至ります。室内の空気環境の問題を改善する製品を作り上げれば、救える命が多くあると確信したんです」
2016年、エアロシールドは九州ヘルスケア産業推進協議会が行う第3回「ヘルスケア産業づくり」貢献大賞の大賞を受賞するなど、徐々に認知度を高めている。しかし、ここに至るまでには苦難の歴史があった。すでに市場に出回っていた空気清浄機と比較され、当初は営業に回っても「高すぎる」と断られ続けたのだ。
「空気清浄機は『空気をきれいにする』と消費者に思われていますが、その定義は明確ではありません。例えば空気のにおいの原因は細菌やカビです。これが従来の空気清浄機では除去できないこともあまり知られていません。私は消費者との意識のギャップを埋め、常識を変えたいんです」