昨年末のある夜、マンハッタンのドリーム・ダウンタウン・ホテルの屋上にあるルーフトップ・バーのステージに、ジョゼフ・エデルマンの姿があった。
キュウリのスライスをあしらったジンベースのカクテルが次々にテーブルに運ばれていき、マンハッタンの高層ビル群が背後で遠景をなす中、エデルマンは、エルビス・コステロの「ポンプ・イット・アップ」を本人になりきって声を張り上げる。
それは、パーセプティブ・アドバイザーズで毎年の恒例になっているホリデイパーティーの一場面で、エデルマンの演奏はある種のウィニングランのようなものでもあった。彼の旗艦ファンドは、2017年に純利益が41%増加したのだ。
規模を追求するつもりはない
たいていのヘッジファンドのマネージャーなら、運用資産額がどれほど巨額であるかや、手数料収入の総額、個人資産額など、何か別の物差しで違いを際立たせようとするはずだ。エデルマンの運用資産額は38億ドル。たしかに大金には違いないが、名だたるヘッドファンドにははるかに及ばない。
そしてこのほど、エデルマンは純資産額11億ドルとなりビリオネアの仲間入りをしたが、フォーブスのランキングでは少なくとも45人のヘッジファンド・マネージャーに後れを取っている。
では、彼のヘッジファンド「パーセプティブ・ライフ・サイエンシーズ」が世に誇れるものは何かというなら、それは長期的な運用成績なのだ。1999年の創業以来、手数料控除後の純益が年率で30.2%というのは、人間が運用するヘッジファンドとしてはトップの成績だ。
デビッド・テッパーが率いるアパルーサ・マネジメント(Appaloosa Management)の1993年以来の純益が年率で25%だから、それをも上回っている。要するに、エデルマンが投資した資金は1.3倍になって返ってくるということなのだ。
現在62歳のエデルマンは、バイオテクノロジー投資という狭い分野の外ではそれほど名が知られているわけではない。しかし臨床データや評価項目といった用語が話題に上る世界では、彼はロックスターさながらの地位にある。
「欲しいのは優秀なトラックレコードだ。それが私のスコアカードになるのだから」とエデルマンは述べ、規模を追求するつもりはないのだと主張する。彼は自分の強みを、人間の行動の特異性を理解できていることにかなりの部分起因しているのだと分析する。
科学をビジネスに結びつけられないか
ジョゼフ・エデルマンの父イジドールは科学者で、コロンビア大学の生化学と分子物理学の学科長にまでなった人物である。ジョゼフはティーンエイジャーの頃には、毎夏を父の研究所で働いて過ごした。その研究所には、ノーベル賞を二度受賞したライナス・ポーリングの姿もあった。
「私はそこで科学的な手順に親しんだ。それは、必要不可欠なだけの懐疑的な物の見方を含んだある種の思考法のことだ」とエデルマンは言う。
カリフォルニア大学サンディエゴ校で心理学を学んだ後、エデルマンは薬物学で大学院の学位を取得しようと志すが、方針転換をして1980年にニューヨークに移り住む。科学をビジネスに結びつけられないかという漠然とした思いに突き動かされてのことだった。