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2018.10.04

イノベーション大国イスラエルは、なぜいまアフリカ市場を目指すのか?

Alexander Lukatskiy / shutterstock


技術革新の恩恵を受けているのは地球上でたったの15%

今世界で進む技術革新による恩恵を受けている人々は、実はこの地球上の約15%でしかない。世界人口残り85%とのギャップを埋めるため、イスラエルのイノベーションの力を新興国で活用するPears Programというアクセラレーターがイスラエルで活動している。

現在はアフリカやインド市場をターゲットにイスラエルの起業家による新興国進出を支援し、水、食糧、クリーンエネルギー、教育、医療を地球上すべての人に保証することを目指している。また、技術だけではビジネスが成立しないことを知るイスラエルのスタートアップは、市場を深く知る現地スタートアップとのパートナーシップを結びサービスの展開を狙っている。

イスラエル工科大学発のクリーンエネルギースタートアップApollo Power社は、世界の未電化問題を解決しようとするスタートアップだ。ソーラーフィルムを開発し、既存のオフグリッドソーラーと比べ軽量で安価な発電を提供している。パネルではなくフィルムになっているため、どこにでも持ち運び可能で、家の屋根だけでなく道路や貯水池等、あらゆる場所に持ち運び発電できる点が強みだ。

Sight Diagnostics社は、自動運転技術を提供するMobileyeの元開発者と、ハーバード大学生物工学研究所の科学者が設立したスタートアップだ。自社開発した血液検査キットと解析機器を通し、医療施設が十分にない農村地域の住民に対してマラリアを正確かつ迅速に発見する診断ソリューションを提供している。

コンピュータビジョンを用い、細胞の大きさ、形状、細胞内の形態を解析することで、マラリアに感染した患者を早期に発見することを可能にした。現在は60万個の血液検査キットを提供している。

ハイテク産業と新興国の融合が生み出すリープフロッグ現象

深刻な課題に直面しているアフリカ大陸とハイテク産業に強みをもつイスラエルの相性はとても良い。アフリカのような新興市場の発展においてイスラエルの先端技術が組み合わさることにより、先進国と同様の段階的な進化を踏むことなく、途中の段階を全て飛ばして世界がまだ見ぬ最先端に到達するという、まさにリープフロッグ現象を生み出す可能性を秘めている。

圧倒的な勝ちプレイヤーも大企業も存在しないアフリカ大陸の経済は、今後スタートアップと共に成長し、インフラレベルから現代のテクノロジーをベースに、金融・医療・物流・エネルギー・モビリティ等の社会システムが設計されていく。アフリカでは1日2ドル以下で暮らす貧困層にもモバイルが浸透し、その基盤を軸に彼らの生活を豊かにするあらゆるサービスが展開されている。

イスラエルがもつサイバーセキュリティ・通信・AIといった独自の技術がアフリカ社会基盤の裏側を支え、市場や顧客課題を深く理解するアフリカスタートアップがサービスを展開していく。世界が知らない間に、イスラエル発のテクノロジーが、私たちが想像するより圧倒的に早くアフリカ大陸を進化させている。

イスラエルと同じように技術に強みをもつ日本企業がアフリカ市場に参入するはまさに今なのかもしれない。

連載 : アフリカのVCが見るローカルスタートアップ
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文=寺久保拓摩

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