次にジャパネットたかた創業者の髙田明さん。トークショーの第一声で「すべてはメンタルだと思っています」と発した姿が、彼自身の姿勢を示している。企業でも個人でも、人間は心の持ち方でどうにでも変わることができる。そこで大切なことは“今という瞬間をどれだけ一生懸命に生きるか”ということだ。
高田さんは、そういう生き方をすることで直感や創造性や変化を享受でき、それは決してAIでは実現できない人間固有のあり方なのだと説かれていた。
そんな「心」を重んじる経営の中で気をつけなければならないのは、「〜のつもり」に陥っていることに気づき、見逃さないこと。一生懸命にやっている“つもり”、今に生きている“つもり”… そんな「つもり」の芽を摘むためにも、高田さんは今を全力で生きていない人や組織には厳しく接するのだそうだ。
最後はANAホールディングス相談役の大橋洋治さん。大橋さんの考える経営者の仕事とは「理念や夢にこだわり、それをみなに浸透しみなが共有するまで徹底的に語り続けること」である。企業風土を変える際、最大の敵は内にあると。その内なる敵を克服していくためにも、確固たる理念を持つことが重要なのだとお話されていた。
さらに、「組織の成功は組織の明るさにより成り立っている」との信念に基づき、暗い心でやっていても明るい結果は絶対にやって来ないと話す。「何をするか」だけを考えず、「何を x どんな心でやるか」が重要だということをずばり指摘されていたのだ。実際に大企業を成功に導いた実績をもつ大橋さんからその言葉をお聞きでき、心の大切さを改めて実感した。
3人のお話に共通するのは、目に見えない要素、つまり「心の状態」が組織のパフォーマンスに極めて大切な因子であり、経営者としてそれを重要な因子と認識し、実際に実践・実行している点だ。多くの経営者は仮に重要だと分かっていたとしても、徹底できずに中途半端なのではないかと考える。「何を x どんな心でやるか」というパフォーマンスの原理原則、このどちらかが欠けても、企業の成功はないだろう。
連載 : スポーツ心理学で紐解く心の整え方
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