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2018.10.08

手段が多すぎ? 日本のキャッシュレス化の現状と課題

Neomaster / shutterstock


一方で、海外の動向をみると、もともと現金の利用度が高くなかったスウェーデンでは近年、現金の減少が加速している。このことは、キャッシュレス化が徐々に進む中で、スウェーデンのように「キャッシュレス手段の方が使える店が多い」といった状況にまで至ると、「ネットワーク外部性」が今度は逆方向に働き、現金の減少に拍車がかかりやすいことを示しているように思われる。

日本では、これまでのスピ-ドは必ずしも早いとは言えないものの、最近、キャッシュレス化への世の中の「関心」は急速に高まっている。グーグルで「キャッシュレス」が検索された回数は2018年に急速に増えている。


(出所)日本銀行「キャッシュレス決済の現状」 *Google Trendsを参照して日本銀行が作成(2018年9月25日時点)。

日本のキャッシュレス化の課題

上記をふまえて、日本のキャッシュレス化にとっての課題をいくつか挙げておきたい。

まず、キャッシュレス化を進める上では、デジタル手段の便利さやスマ-トさを売り込むことも大事だが、決済手段として「ネットワ-ク外部性」を十分発揮できるだけの「規模」をいかに確保していくかも重要な鍵となる。この点は現在、海外でも強く認識されており、例えばシンガポールや韓国は先月、決済用QRコードの規格統一に向けた取組みを公表している。

また、日本では、現金を使う理由として、「使い過ぎの心配がない」ことを挙げる人々が多い。このことは、日本でキャッシュレス化を進める上で、このような、「消費の計画性を重視する」といった日本人の特質を考慮した機能を付加していくことも、一つの突破口となる可能性を示唆している。

加えて、現在、キャッシュレス化が日本だけでなく、世界的に注目されている背景としては、決済に伴うデータを収集し活用したいという動機も働いている。この中で、広範な企業が、データ入手のためにさまざまなインセンティブを賦与しながら、キャッシュレス決済に誘導を図る事例が増えている。

この点は、前述のレポートでも、人々がキャッシュレス手段を使う理由として「ポイント」や「割引」が大きな誘因となっている旨紹介されている。このことは、コスト削減に加えデータ活用という面からも、キャッシュレス化を進める力が働き続けるであろうことを示している。

一方で、収集するデータのセキュリティやプライバシー保護について、顧客の安心を確保していくことも、キャッシュレス化を進める上で重要なポイントとなるだろう。

連載 : 金融から紐解く、世界の「今」
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文=山岡浩巳

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