この状況はフェイスブックの経営陣が最も恐れていた事態だ。彼らがモットーとして掲げた、「Move fast and break things(素早く行動し破壊せよ)」という行動様式は今、変更を求められている。今回の脆弱性の問題は、新たなプロダクトの市場への投入を急ぐあまり、十分なテストを怠った結果生じたものだ。
フェイスブックのAIの導入の遅れは、オペレーションコストの増大につながっており、営業利益率は「今後の数年で30%台半ばに向かう」と、7月25日の決算発表で述べていた(今年第2四半期の営業利益率は44%だった)。
その原因の一つに、偽ニュース対策のため、膨大な人員をコンテンツ監視員として雇わねばならないことがあげられる。「素早い行動」を優先させたため、プライバシー管理がおろそかになっていた。
フェイスブックはデジタルライフに必須の、成熟したプラットフォームになることをゴールとしているが、そのためにはネットワーク上の出来事の全てをリアルタイムで把握し、適切な対策を講じることが必要だ。経営陣は業界のトップクラスの才能をかき集め、対応に乗り出しており、彼らがここ数カ月の株価の落ち込みに怖気づかないのであれば、時間をかけて、事態を打開することも可能だろう。
売上や利益は、長期的な視点でいうと現在の水準を上回るかもしれない。しかし、短期的には市場はネガティブなニュースのみに注目し、利益率の減少が続き、株価はかなりの期間にわたり低い水準にとどまるとみられる。フェイスブックの株式を保有する人が、ポジションの引き下げを考えるのであれば、今からでも遅くはなさそうだ。
一方で、市場のセンチメントが冷え切ったなかで、投資家らが見極めたいのは、フェイスブックがAIの導入を完了し、人間による監視コストを引き下げるタイミングがいつになるかだ。同社がそれを達成したなら、利益率は再び40%の半ばに回復するだろう。しかし、そこまでの道のりはかなり長い。