ミャンマーで奏でられた「日本との絆」


ミャンマーの日本への思いは、アウン・サンや独立後、政府の要職に就いた人々を親身に助けてきた、少なからぬ日本人への感謝であったと言われる。さらに、欧米からの経済制裁中にも日本が地味に黙々と支援を続けていた事実が大きい。証券取引所開設はその好例である。

トランプの登場、中国の国際社会への関与増大、核を材料に大国を翻弄する北朝鮮外交、欧州の混迷等々、今日世界を巡る情勢は、文字通り、一寸先は闇、だ。日本の海図も判読しにくい。ひとつ明らかな点は、アジアと良好な関係を保つことが日本の死活問題となっていることである。隣接する東アジア諸国との関係改善は進みにくい。わけても中国の是々非々の対応には思案顔を崩せない。ASEANも一枚岩ではない。ミャンマーは日本にとって、経済面でも地政学面でも不可欠の重みを持つ。

「私の親父は、映画『ビルマの竪琴』の音楽担当でした」

微笑む山本氏の表情は、著名な指揮者だった亡父の直純氏そっくりだ。彼のリードでミャンマーの音楽家たちが奏でる八木節は、底抜けの明るさに満ちていた。


川村雄介◎1953年、神奈川県生まれ。大和証券入社、シンジケート部長などを経て長崎大学経済学部教授に。現職は大和総研副理事長。クールジャパン機構社外取締役、南開大学客員教授を兼務。政府審議会委員も多数兼任。『最新 証券市場』など著書多数。

文=川村雄介

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