イノベーション・エコシステムの内側


「2018 Mobility Technology Conference」の会場は、テルアビブ市内からは少し離れた「ザ・リッツ・カールトン ヘルツリーヤ」だ。遺跡の前に位置し、目の前には大きなマリーナがあり、沢山のヨットやクルーザーが並んでいた。

無料とは思えないほど飲食も充実しており、ここまでして参加者を集めるイベントの意図は何だろうか、と疑問に思ったほどだ。しかし、無料だからといっても雑多な感じはなく、来場者のレベルも高く、現地のスタートアップを求めて世界中から投資家が集まっていた。



美しいビーチ沿いに立ち並ぶホテルでは、プールやジャグジー、カクテルなどを楽しんだ。そこで出会ったのは、ユダヤ人の血が流れている人が多く、世界中のさまざまな都市から来ていた。ファミリーでビーチの近くのホテルに滞在し、次の日にエルサレムにお祈りに行くというのが主流のようだ。

イギリス・マンチェスターから来たベラルーシ出身のユダヤ人3世の投資家は、かなり有名な企業にも投資している人物で、スタートアップの買収劇について語っていた。LAから結婚式にやってきたというアルメニア系アメリカ人は、天然資源ビジネスマン。ジャーナリスト兼小説家で、イスラエルに親戚が多いというドイツ系の女性もいた。会う人会う人、みなプロフェッショナルという感じだった。

スタートアップの背景に6つの要素

私にはイスラエル人のビジネスパートナーがいるが、彼になぜイスラエルはスタートアップ大国になったのかと聞いたところ、「Startup Nation (Senor and Singer 2011)」というベストセラー書籍から理由を説明してくれた。

以下の6つの要素が、イスラエルでスタートアップエコシステムが構築されて来た背景だという。

1. ミリタリーサービス:18歳で男子は3年、女子は2年の兵役の義務
2. 疑いと議論をする文化:正しいリーダーシップが行われているかが議論される
3. 積極性:物事を積極的かつクリティカルに考える習慣がある
4. 歴史的背景:歴史的にもさまざまな事があった場所で、常に向上し成功しようという空気がある
5. インセンティブ:優秀な科学者やナレッジワーカーには移民でもインセンティブが与えられる
6. 小国の利:国のサイズが小さいので、創造性による質の高さが求められる

私個人としては、イベントやホテルでユダヤ系の人々と話をしていて、彼らの「何事も疑ってかかる姿勢」「質問する力がある」ところにカギがあるように感じた。スタートアップをするうえで、必要なのは創造性だ。現状を疑うことから、破壊的イノベーションを生み出すサービスはつくられる。

とはいえ、特に注目されるモビリティーやサイバーセキュリティ分野においては、軍というベースが大きく、比較的英語が堪能で最初からグローバルマーケットを見ているというところもあるだろう。

すでにスタートアップ大国として世界から認知され、投資家や起業家、新しい技術やアイディアを求める人々を引き寄せているイスラエル。現地を訪れて、より強く、この流れは、今後さらに加速していくだろうと感じた。

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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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