超絶の美技に息を飲む、スバルの「船積み」を体験

川崎港に入港した自動車専用貨物船「バイオレット エース」


気になる新型フォレスターの乗り味は?

アメリカで待ち望まれていると同時に、日本のファンにとっても、新型フォレスターの乗り味は気になるところだろう。今回、試乗に供されたのは、2.5リッター・エンジンを積む「ツーリング」とハイブリッド機構を積む「アドバンス」の2車種だ。

はじめにカギを受け取ったのは、最高出力184ps/最大トルク239Nmを発揮する2.5リッター水平対向4気筒エンジンを積む「ツーリング」である。



スタート・ボタンを押すと、スバル自慢の水平対向エンジンが目を覚ます。多くの自動車メーカーが「V型」や「直列」といったエンジン形式を選ぶのに対して、スバルは頑固なまでに「水平対向」を作り続けている。

その理由は、ごく単純明快だ。左右に並行してピストンがレイアウトされることが、重量的にも、力学的にも、理想的なバランスであり、さらに重心が低く、剛性も高くなる……と、小難しいことを並べるより、このエンジンの魅力を知るには、クルマを走らせてみることが一番だ。

Dレンジに入れて、アクセルベダルを踏み込むと、1520kgのボディを力強く加速していく。最近のトレンドである中低速トルクが分厚いタイプのエンジンではなかったが、直噴化や軽量化に加えて、トルクを適正にピックアップするリニアトロニック(CVT)と組み合わせることにより、欲しいときに欲しいだけ加速できる素直なパワートレインへと進化した。

もちろん、スバルの真骨頂であるステアリングホイールを切ったぶんだけ鼻先を曲げる素直なハンドリングは保たれている。

一方、街中でのキビキビ感は、電気モーター(10kW/65Nm)と2リッター直4水平対向エンジン(145ps/188Nm)を組み合わせたハイブリッド・モデルの「アドバンス」に軍配が上がる。



高速道路のランプを駆け上がるときには、電気モーターのアシストによる加速感が実に頼もしい。高速道路上で気になる段差を越える場面では特にフラットな乗り心地を得た。

上質な乗り心地をもたらす新プラットフォーム

両モデルに共通することだが、従来の高剛性を実現した新プラットフォームの採用に加えて、リア・サスペンションの取り付け剛性を高め、ジオメトリを見直した。平たく言えば、より剛直なボディを得て、フロアからビリビリと伝わる振動を減らした結果、ワンランク上の上質な乗り心地になったというワケだ。

水平対向エンジンとAWDに加えて、近年のスバルの看板である「アイサイト」については、「ツーリングアシスト」を全車に標準装備している。障害物を検知して自動ブレーキで衝突を避けるプリクラッシュ・セーフティ・システム、全車速追従機能付きクルーズ・コントロール・システム、白線内を保って走る車線逸脱抑制機能といった基本的なドライバー支援が標準装備されているのだ。
 


さらに、後ろから死角に忍び込むクルマの存在を警告したり、対向車の有無でハイビームを自動で切り替えたり、ドライバーの疲労具合をモニタリングして警告するといった最新のドライバー支援機能が加わった「アイサイトセイフティプラス」を選ぶこともできる。

末筆になるが、ご存知の通り、燃費・排ガス不正問題によってスバルが信用を失ったことは否めない。ただ、問題を真摯に受け止め、一つひとつ対応を重ね、新たに中期経営ビジョン「STEP(スピード、トラスト、エンゲージメント、ピース・オブ・マインド&エンジョイメント)」を打ち出したことは、ニュートラルな視点で見守るべきだ。

これには、2025年から2030年に向かって「着実に、力強く、歩みを進める」という意図が込められており、再び、メイド・イン・ジャパンならぬ、“メイド・イン・グンマ”の誇りを回復しようとする真摯な姿勢は、新型フォレスターを始めとする今後のクルマ作りにもつながっていくと期待したい。

 

文=川端由美 編集=青山鼓

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