ビジネス

2018.09.28

上場、グローバル展開を経て見えてきた、経営者の「使命」|新野良介

ユーザベース代表取締役 新野良介

「経済情報で、世界をかえる」をミッションに掲げ、企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA」やソーシャル経済メディア「NewsPicks」を提供しているユーザベース。2008年創業のベンチャー企業でありながら、2013年に上海・香港・シンガポールに拠点を開設し、2016年にはスリランカにリサーチ拠点を開設。

翌年、2017年にはNewsPicksの米国進出に伴い、Dow Jones社との合弁会社をニューヨークに設立するなど、グローバルでアナリストや編集者、公認会計士など多種多様なプロフェッショナルが集まる会社としても名を轟かせている。今回は、同社の取締役・新野良介氏に起業家の素養や組織づくりの秘訣などについてドリームインキュベータ小縣が聞いた。(全7話) ※本記事は2017年7月21日に実施したインタビュー内容を基に作成しております。

上場して初めて感じた経営者の使命

──上場してみて、何か変わった部分はありますか?

変わったことはほとんどありませんが、気にしていることはあります。「長期的に見て正しいと思うことを、勇気を持ってやらなければいけない」ということです。

──「ステークホルダーに短期的な結果を求められるから」ということでしょうか?

そうです。ステークホルダーを中長期的に幸せにしていくよう努力し、信頼してもらい、リソースを預けてもらって結果を出し、再度リソースを出してもらう、というサイクルは上場前も上場後も変わりません。経営者ではなく、従業員だった時もそうです。やりたいことがあれば信用を得なくてはなりませんし、預けてもらったものをお返ししなければ次はなかったので。

その意味では、私はサラリーマンだった時も経営者である今も、常に「新野商店」としてやってきました。

しかし、上場後はやっぱりステークホルダーの方からの期待をより強く感じるようになります。短期的に結果をだすことを求められることも多々あるので、ステークホルダーの皆さまからの期待に答えることと自分達が長期スパンで目指していくもの、そのバランスは常に意識していますね。

私も上場前は、「株価を気にして短期的な売上に走る経営者はダメだ」と考えていたんですが、実際はそう単純な話ではありませんでした。

ステークホルダーの方々は、どれくらいの利益を見込んでいるか聞いてくる訳ですが、経営者としては約束した事に応えたい。ですから、想定している収益を答えて、その約束を守ろうとします。ところが、「で、その次はどれくらいですか?」と聞かれます。これは際限なく続いていくものだと思っています。

ですから、全てに応えようとすると全体のバランスが崩れてしまい、長期的にお返しができないので、時には長期的な視線を持ってもらえるようこちらが勇気ある決断をしなければならないと気をつけています。


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文=小縣拓馬 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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