叱るのではなく諭す 子供の「現在志向バイアス」との向き合い方

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経済学の知識は一部の人にしか役立たないのではないか、と思う人もいるだろう。たしかに、経済学やファイナンスと聞くと、難解で、一部の学者やトレーダー、会計士などにしか必要ないというイメージもある。

しかし筆者は、経済学やファイナンスの考え方は人生の様々なところで活用できると考えており、実際、これらの知識により、人生においてかなり得をしてきたという自負がある。

人間は「合理的経済人」

たとえば、いま財布の中に1万円あるとする。そして、目の前には複数の商品が陳列されている。どれも欲しいものばかりだが、全てを買うにはお金が足りない。自分には予算があり、商品についての必要な情報は理解している。

その前提で、自分が最も満足できる商品の組み合わせを迅速に決定するのが人間であり、これは「人間が合理的経済人」ということを意味している。

経済学とは、このような「合理的経済人」が、限られた予算の中でどのようにして満足度を最大化していくのか、ということを勉強していくものだ。このときに学べる考え方やエッセンスは、子供にも非常に役立つ考え方である。

子供がレジャー前日に夜更かししてBBQを楽しめなかったことも、もらったお小遣いですぐにお菓子を買うか、貯めて将来おもちゃを買うのかといった判断も、実は経済学的なアプローチが可能なのである。

しかし、「人間が合理的経済人」というところには、違和感を持った人もいるだろう。おわかりの通り、実際のところ人間は感情の生き物であり、毎回合理的に動くわけではないからだ。誰もが経験したことがあるだろうが、自分よりも他人を優先した選択をしたり、必要ないと分かっていても買ってしまったりもする。

このように従来の経済学の前提ではなく、現実に近い人間像を基に経済学を新しく学問にしたものが「行動経済学」だ。

これらは相反するものとして語られることもあるが、筆者はそれぞれ正しい部分もあれば、現実には則さないと思う部分もあると考えている。そのうえで、複数の経済学から、日常生活に使えるレベルまで咀嚼したエッセンスを子供向けの金融教育に取り入れている。

こうした経済学ベースの金融教育が幼少時代から行われる環境が整えば、確実に日本の国力は上昇し、各個人の人生も充実したものになるのではと考えている。

【連載】0歳からの「お金の話」
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文=森永康平

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