叱るのではなく諭す 子供の「現在志向バイアス」との向き合い方

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行動経済学の理論に、「現在志向バイアス」と呼ばれるものがある。簡単に言えば、人間は「未来の喜びよりもいまの喜びを重視しがち」であるということで、過去の記事で紹介したマシュマロ実験もこれに該当する。

我が家でも先日、子供たちがこのバイアスに陥っている実例が起きた。

川にBBQに行った時のことだ。当日は早朝から出かけることになるため、子供たちには前日は早く寝るように何日も前から伝えていた。子供たちもそれは十分に理解しており、絶対に早く寝ると言っていた。

しかし、運悪く、BBQの前夜に新しい遊びを発明してしまった子供たちは、夜遅くまではしゃぎ続けていた。「明日起きられなくなるから早く寝なさい」と言っても、「楽しいからもう少し起きていたい」と言う。「寝不足だと気持ち悪くなってしまうよ」「川で遊んでいる時に怪我してしまうよ」など、寝不足が引き起こすネガティブな情報をいくら与えても、子供たちは今を楽しむことを優先してしまった。

結果は言うまでもないだろう。翌日、子供たちは半分寝ている状態で車に押し込まれ、川に着いてもコンディション不良のままBBQをすることになった。

感情ではなく、ロジカルに伝える

これは典型的な「現在志向バイアス」だ。子供に限らず、大人もしばしばこのバイアスに陥る。人間がこのようなバイアスに陥りやすいと知っていれば、子供が実際にこのような経験をした際に、体系だって子供たちに正しい行動のとり方を教えられるだろう。

我が家では以下の様な整理で子供たちと話をした。

楽しくて寝たくないのは十分に理解できる。ただ、寝不足になると、実際に体験したように翌日楽しくない。楽しさの最大値が5だとするとき、前夜の楽しさを5で、体調不良のBBQの楽しさを1とすると2日間の合計値は6である。しかし、前夜の楽しさを3で抑えて早く寝て、BBQの楽しさを5にすれば、その合計値は8になる。結果、トータルで見た効用はより大きくなる。

子供にだいぶ理屈っぽい話をするな……と思われるかもしれないが、小さい頃からロジカルにモノを考えるクセをつけるのは重要なことだ。

こうした話をする際、経済学というアカデミックな考え方をベースに話をすると、大人側の話し方もロジカルになる。アカデミックなベースがないとついつい感情的になってしまいがちだが、感情的に怒ることは子供たちにとってはなんの収穫もないので、注意したい。
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文=森永康平

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