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AI通信「こんなとこにも人工知能」

KPG_Payless / Shutterstock.com

認知症検査・治療への人工知能(AI)の応用例が各国の大学や医療機関から発表されるなか、日本の研究陣からも新しい研究成果が報告された。

奈良先端科学技術大学院大学と大阪大学の共同研究チームは、認知症傾向を早期に発見する新たな機械学習アルゴリズムを構築。PC上のアバターから与えられる簡単な質問に答えるだけで、非常に高い精度で認知症の兆候を発見できるシステムを開発した。

複数の要素から兆候を判断

アバターは検査を行う人々に対して、用意された質問(家族の話題や趣味、好きな歌など)のなかから5問ほどをランダムに出題する。質問は「神経心理検査」をベースにした固定質問および、その他の質問で構成される。


奈良先端科学技術大学院大学プレスリリースより

アバターは回答する人間のイントネーションや発音の明瞭さなど「声」、動詞の使用頻度など「言葉」、また「応答遅れ」や「顔」のデータを抽出・分析。認知症の兆候があるかを判断していく。それぞれ12名の認知症患者・非認知症者を対象にした実験結果では、約92%の確率で認知症患者を見抜くことに成功したという。

なお、応答遅れのデータのみで判断を行った場合の精度は63%。データ要素を複合的に組み合わせて精度を高めている点が、同システムの優位性のようだ。奈良先端科学技術大学院大学・知能コミュニケーション研究室の中村哲教授は言う。

「精神科医などの専門家は、10数年の経験を積むことで患者の表情や言葉遣い、声などから認知症を見抜くことができると言われています。我々としては、その医者の“見抜く力”をシステムの一部として取り入れることはできないかと考え研究を進めてきました。人工知能を使って認知症を検知・治療しようという研究は世界的に流行しつつありますが、アバターとの対話を通じて、さまざまな要素から判断するような研究は他にあまり例がないと思います」

目的はあくまでも“早期発見”

中村教授はまた、「研究チームとして『認知症を診断する人工知能』の開発を目指しているわけではない」と強調する。日常的にアバターと会話することで認知症の兆候を早期発見できるようにし、最終的に医療機関での早期診断に繋げることが目標だという。

物忘れが激しいなど日々の生活に変化があっても、病院で本格的に検査を受けるとなるとなかなか敷居が高い。「そんなはずはない」との認知症に対する嫌悪感から、検査を避け、症状を悪化させてしまう患者も少なくないはずだ。

しかし、一般的なPCでも稼働するアバターとの対話で、症状を気軽(しかも高精度)にチェックできるとなれば話は変わってくる。ワンクッション入ることで、病院での早期診断も増えていくかもしれない。治療遅れによる医療費、家族の負担が増えることを回避するためにも、今後、人工知能を使った手軽な検査ツールが発展していくことに期待したい。

連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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