そのアイスランドは、昨年11月末には41歳の女性首相が誕生、国会議員は38%が女性、企業のマネジメント職は41%、役員の44%が女性。名実共にジェンダー平等指数の9年連続世界一をひた走る。
きっかけとして知られるのが、男女賃金格差が60%近くあったことに抗議し、国の女性の90%が一日仕事と家事を止めて「デイオフ」を取った1975年の「女性ストライキ」である。「その日の写真を見ると、未だに鳥肌が立ちます」とスヴェリスドッティルが言うように、アイスランドの女性が自らを鼓舞する記念碑的な一日になっている。
電話サービスも銀行も工場も開店休業、新聞も発刊できず、国の経済活動はストップした。さらに、アイスランド女性の賢さと強さを表す数字がある。出産時の未婚率が70%を超えることだ。未婚の出産は日本では貧困や失敗といったイメージがつきまとうが、アイスランドでは「個人」の強さを証明する誇らしい数字だ。
その背景として、子育てにかかる費用が収入の6.7%と格段に負担が少ない政策と、離婚してもあまり気にせず、兄弟姉妹で父親や母親が異なる「パッチワーク・ファミリー」が一般的、という事実がある。
「もちろん、複雑ではあります」とスヴェリスドッティルは笑う。自身は同性のパートナーと結婚。現在1歳半となる双子の男の子がいる。どのように妊娠したのか聞いたところ、技術的なことではなく「家族」であることが大切だと思っている、という。
「問題だとは思いません。シングルファーザーやシングルマザー、同性婚、色々なパターンがあります。重要なのは、人々が『箱』に閉じ込められてプレッシャーを感じるのではなく、送りたい人が送りたい人生を送ることだと思います」
18年1月には、世界初となる画期的な「性別による賃金格差を禁止する」法律が施行された。しかし、スヴェリスドッティルは満足していない。
「16年には47%だった女性議員の割合が昨年の選挙では減りました。私たちにとっていい教訓です。ぼうっとしていては後退します。恒常的な努力と改善が必要です」と語る彼女に、なぜダイバーシティが必要なのか聞いてみた。
「ステレオタイプをどぶに捨て『その人自身』に目を向けることができる。そして、その人が送りたい人生を送ることができるから」
アイスランドの危機にはいつも立ち上がる女性がいる。それがとてつもなくカッコいいのだ。