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世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

スコット・ファークァー(右)マイク・キャノン=ブルックス(左)(photograph by James Horan)

「十数年前に起業したとき、エコシステム(生態系)なんてなかったね。でも、僕らはここに腰を据えようと決めた。そして今は、活発なテクノロジー産業のエコシステムがある。だから、僕らはむしろ『エコシステムを作る』状況にあったと思う」

シドニーを拠点に置く豪ソフトウェア開発大手「アトラシアン」の共同創業者スコット・ファークァー(38・写真右)はそのように振り返る。近年、Canvaをはじめ、オーストラリアを拠点に世界市場で活躍するテクノロジー企業が増えているが、それはアトラシアンの存在を抜きにしては語れないだろう。

2002年創業の同社は、課題管理ソフト「JIRA(ジラ)」やタスク共有ソフト「Trello(トレロ)」をソフトウェア開発者向けに開発し、AirbnbやNASA(米航空宇宙局)、トヨタ自動車など世界で10万社以上の顧客を抱えている。

とはいえ、彼らもここまで大きくなるとは想像していなかったはずだ。もとは学業に飽きたマイク・キャノン=ブルックス(38・写真左)が大学の同窓生で「大企業勤めはイヤだが、同期と同額の初任給がほしい」と考えていたファークァーと意気投合して起業。他社のサポートデスク業務をするうちに、作業を効率化するタスク管理ツールを開発・販売するようになり、世界的な企業へと成長した。

アトラシアンはサンフランシスコにオフィスを持つものの、いまも本社はシドニー市内にある。だが、IPO(新規公開株)は地元のASX(オーストラリア証券取引所)ではなく、米NASDAQで行った。それは同社が「世界中の顧客を対象としたグローバル企業だから」だとキャノン=ブルックスは説明する。

「僕らは世界で最も優れた人材を獲得しようとしている。投資家、外部取締役を含めて最高の人材を。健全な愛国心は良いことだけれど、アトラシアンを世界で最も成功している会社にしたい」

ファークァーも、アトラシアンをキャノン=ブルックスが言うところの「世界で最も成功している会社」に育てることこそが、オーストラリアにとっていちばんだと考えている。

「雇用を創出することが、母国にできる最大の貢献だと思う。そのためにも、世界で最も成功している会社になることが重要だよ」

実際、アトラシアンの成功が励みとなって起業する人が、オーストラリア国内で増えている。豪ベンチャー投資会社ブラックバード・ベンチャーズのニキ・シェヴァクは、「アトラシアンのような成功譚に触発されて既存企業に就職するのではなく、起業を志す人が増えている」と指摘する。

「アトラシアンのように急成長した会社で働いた経験がある人たちも自信をもつようになり、起業しています。こうしたフィードバックループによって、次世代のスタートアップも生まれています」

当のキャノン=ブルックスは、「僕らのおかげと言う人もいるけれど、それは違う」と、アトラシアンによる“ハロー効果”に異論を唱える。

「ベンチャー投資家や起業家がシリコンバレーから帰国したり、スマートフォンが浸透したり、と多くの出来事が積み重なった結果にすぎないよ」

それでも、とファークァーはつなぐ。

多くの会社が『次のアトラシアンになる』と言ってくれるのは、やっぱりうれしいよね」

写真 = ジェームズ・ホラン

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