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2018.09.26

【独占】ウィル・スミスと本田圭佑が「ドリーマーズ・ファンド」をつくった理由

「ドリーマーズ・ファンド」ファウンダーの本田圭佑(左)とウィル・スミス(右、Getty Images)


ウィルはすでに俳優として大成功を収めており、彼は映画製作会社やブランドなど、いくつかの企業を運営していた。ウィルは矢田と2年ほど付き合いながら、矢田の仕事ぶりを見て、「コーに合うポジションが必要だと思い、彼にファミリーオフィスのCEOに就いてもらったんだ」とウィルは話す。


手前のドリンクは、息子ジェイデンが環境に考慮し発案した「JUST WATER」。ファミリーオフィスの事業のひとつだ。

矢田の強みは前述したように、誰かの手伝いをすることで、信頼関係が強いネットワークをもっていることだ。彼のハーバード時代のクラスメイトに、ミュージシャンのD.A.ウォリックがいる。D.A.ウォリックはのちにドリーマーズ・ファンドの「ベンチャーパートナー」というポジションに就くのだが、彼は「業界屈指のインベスター」として知られる。

D.A.はスポティファイに投資をして成長に貢献したほか、イーロン・マスクのスペースXやリップルにもシード投資をしている。一方、矢田はロサンゼルスを拠点に、アメリカのトップVCであるアンドリーセン・ホロウィッツからも一目置かれた存在で、情報を共有する関係にある。

誰かのために働き、助けたい

西海岸を拠点に活動をする矢田は、一人の日本人と出会う。投資運用の世界で頭角を現していた中西武士である。

1歳のときからアメリカで暮らしてきた中西は、矢田と「日本」という共通点があった。中西と矢田は長い期間をかけて、「日本」について話し合ったという。

単に金儲けをしたい人のもとで働くのは嫌だ。良い理由でお金は使われるべきだし、世の中が良い方向に向かうために、誰かのために働き、助けたい、と。中西はこう言う。

「ずっと海外で育ってきて祖国の日本を見ると、本当に素晴らしい国だと思います。それなのに世界でのプレゼンスが下がっていくのが悔しいんです。ファンドを通してやりたいのは、日本の資本をアメリカのトップ企業に投資していくこと。必然的にアメリカの起業家は日本を意識しなければならなくなる。我々の仕事はいい企業を見つけて、日本の企業に紹介していくこと。そのためには日本企業が入れないアメリカのネットワークに入り込む。その解決策として考えた結果が、ドリーマーズ・ファンドなんです」

では、彼らのファンドの理念とは何か。「4人でどんな話し合いをしたのかを聞かせてほしい」と、私たちは要望した。すると、本田圭佑とウィル・スミスは「4人で始めたファンドなのだから、4人そろってインタビューに応じたい。バハマまで来てほしい」と、私たちに伝えてきた。こうして8月2日、冒頭で触れたウィルの別荘を訪ねて、話を聞くことになった。

「では、インタビューを始めましょうか」

テーブルに揃った4人に声をかけると、真っ先に本田がこう言った。

“I have to speak my story.”

本田は英語で自分自身のことを語り始めた。

「10年前、海外に出たとき、僕はただのサッカー選手で、僕の目標はワールドカップだけでした。でも、(念願叶って)外の世界に出てみると、目にしたのはいいことばかりではなかったのです」

彼の “理念”とは、彼自身のストーリーから生まれたものだった──。

Forbes JAPAN9月25日発売号では、バハマで撮り下ろした写真とともに、4人を巡り合わせた4人のエピソードを紹介する。

文=藤吉雅春

この記事は 「Forbes JAPAN ストーリーを探せ!」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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