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2018.09.25

アフリカの小学校に明かりを! 佐賀の屋根屋3代目の挑戦

ベテクク村の子供たちと川口信弘氏


ベナンで、このソーラーシステムを使って川口さんが電化するのは、この国最大の都市コトヌーから車でおよそ4時間、ベテクク村にある「いのうえ小学校」である。「いのうえ」というのはもちろん日本人の名前で、この「いのうえ小学校」はLIFULLの井上高志社長の個人的な寄付により設立された学校だ。この学校には6学年でおよそ500人の子供たちが通っている。

そもそもベテクク村では、小学校のみならず、村自体に電気が通っていない。水道も整備されていないので、村人たちは生活の必需品となる綺麗な水を手にするために、いのうえ小学校まで井戸水を組みに来る(この井戸もゾマホンさんが掘ったものだ)。

いのうえ小学校は、ただの小学校ではなく、村のライフラインとしての機能までをも担っているのだ。そんな村の中枢に電気がないということで、川口さんが立ち上がったというわけだ。既に電化に必要な資材は輸送済みで、今年の11月にはいのうえ小学校に明かりが灯る予定だという。

電気はないが、元気はある

川口さんはこれまで、現地の政府や民間企業、日本政府と協力し、アフリカ各地にソーラーパネルで明かりを灯してきた。しかし今回は、その資金を行政などに頼ることなく、クラウドファウンディングで募集をしている。これまでの実績がありながらも、なぜクラウドファウンディングなのか。そこには、ベナンをはじめとした西アフリカの現状を、多くの人に知ってもらいたいという気持ちがあった。

ベナンをはじめとする西アフリカ諸国は、もともとフランスの植民地だ。南アフリカをはじめ、ケニアやタンザニアなど、それなりに治安が安定し観光地としても人気のある国々は、もともとイギリスの植民地だった。それら諸国と比べ、旧フランス領である西アフリカ諸国は発展が遅れているという現実がある。もちろん、ベナンの経済もまだまだ発展途上にある。

そんなベナンの人々は、共通語としてフランス語を話す。言葉だけでなく、教育や文化にもフランスの影響が多分に残っているという。しかし、国が発展の指針としているのはフランスではなく、日本だというのだ。ゾマホンさんの活動もあってか、日本語を学習する人も多い。そんな彼らの気持ちに応えたいというのが、川口さんの活動の根底にある。



「ベナンの人々は、人懐こくて、親しみが持てる。親日家も多いですしね。彼らの生活に電気はありませんが、元気はあるのです。そんな彼らの姿を見て、日本の人たちも元気になってもらえたら嬉しいですね」

貧しい暮らしながらも、日々明るく元気に暮らすベナンの子供達を見てきた川口さんの目には、いまの日本はどうも元気がないと映るという。恵まれない環境であっても、人生をまっとうに生きている人々がいる。それを日本の人たちにも知ってもらいたいのだという。
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文=鍵和田昇

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