未熟な子どもに本気で夢を語らせようとするならば、時間をかけてじっくりと本人が自分の内面に向き合うプロセスが必要になる。加えて、周囲もそれなりのサポートをしなければならないはずだ。だが、突然授業の一環で出た問いの背景には、そこまでの環境も大人たちの覚悟も感じられなかった。
もちろん、サッカー選手の本田圭佑さんのように、子どもの頃からセリエAで背番号10を背負って活躍するという夢を明確に描き、その通りに実現できる人もいるだろう。それは本当に素晴らしいことだし、そうした生き様に憧れるのは当然だと思う。しかし、それはごく稀なケースであり、なかなか思うようにはいかないのが現実だ。
多くの若者は「大きな夢」を語らなければならないプレッシャーに押しつぶられてしまうかもしれない。少なくとも、街中に生きる人の大半は、行き当たりばったりで人生を選択し、流れ流されて今ここにいるのではないか、というのが私の感覚だ。そして、それでいいじゃないかと心から思っている。
そろそろ「夢を描け」というプレッシャーから、大人も子どもも解き放たれたほうが、のびのびとやりたいことが見つかるのではないかと思っている。無理やり夢を語ろうとすればするほど、嘘の自分を作り上げることになる。
夢を描くことに一生懸命になる代わりにやるべきことは、ありのままの自分を観察したり、再認識したりすることではないだろうか。
今日、どんな行動をして、何を感じたか。その振り返りの積み重ねにしか、明日の一歩を踏み出すヒントはない。
連載:自分自身の育て方
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