ビジネス

2018.09.24 10:30

台湾で「罰金回避」のクアルコム、5Gプロジェクト再開へ


フォックスコンらにとっても朗報

クアルコムは、今回の合意の有無に関わらず、台湾で新規プロジェクトを立ち上げていた可能性が高い。グーグルやマイクロソフトなど、米国の大手テック企業がエンジニア人材の雇用や比較的安い人件費、製造受託企業との関係強化などを目的に台湾での事業拡大を表明している。

台湾には、エイサーやエイスーステック・コンピューター、HTC、コンパルエレクトロニクス、クアンタ・コンピュータなどハードウェア企業も多い。中には、Windows 10を搭載したPCやスマホを製造するメーカーもあるが、クアルコムは6月にWindowsマシンには同社のSoC「Snapdragon 850」を搭載すると述べている。

「クアルコムはWindows 10向けチップセットであるSnapdragon 850を開発してPC事業を強化しており、台湾への投資拡大は理に適っている。台湾のPCサプライチェーンは競争力があり、基盤もしっかりしている。クアルコムはそこに目を付けた」と調査会社IDC のMario Moralesは話す。

調査会社ガートナーによると、クアルコムは昨年減収減益となったものの、半導体事業はライバルである「MediaTek」の低迷によりスマホの市場シェアが回復し、増収だったという。世界5位のチップメーカーであるクアルコムは昨年、自動車やタブレット、VRヘッドセット、IoT向け事業を拡大している。

アナリストらも、今回の台湾政府との合意は地元企業に恩恵をもたらすと考えている。台北に本拠を置く「Market Intelligence & Consulting Institute」のシニアアナリスト、Eddie Hanによると、クアルコムが5Gモバイルネットワークの立ち上げを支援することで、スマホの製造受託を手掛ける台湾企業の「ペガトロン(Pegatron)」や「フォックスコン(Foxconn)」との取引きが訴訟に発展する可能性が低下したという。製造受託企業側は、スマホメーカーなどの最終顧客が既に支払ったロイヤリティをクアルコムが請求してこないことを望んでいる。

台湾のコンサルタント会社「Quantum International Corp.」のシニア・アドバイザーであるJohn Brebeckによると、今回の合意はクアルコムと台湾政府の双方にとって「何が得られるか」が焦点だったという。

編集=上田裕資

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