子宮はバグじゃない! 数字が示す「企業に女性が必要な理由」

イラストレーション=ジャコモ・バグナラ


母性が鍛える4つの「筋肉」その1: 生産性

これは最も明白かもしれない。子どもをもつと、1日は同じ24時間なのに、タスクは激増する。あなたはマルチタスクの鬼となるだろうが、これは女性がそもそも男性より勝っているスキルの典型であり、データもそれを裏付ける。
 
セントルイスの連邦準備銀行が行った研究によれば、母親たちは30年におけるキャリアのほぼどの時点でも、子どものいない女性よりはるかに生産性が高かった。また、ふたり以上の子どもをもつ母親は、すべての調査対象者のなかで最も生産性が高かったのだ。
 
もしもあなたが出産したばかりで、何週間も十分に寝ておらず、産休などという贅沢とは無縁のまま、混沌とした家のなかを見回していたなら、たぶん自分が生産性抜群のマシンだとはとても思えないだろう。
 
だが、この研究はそんなあなたに希望を与えるに違いない。幼い子どもたちは一時的におよそ15~17%、あなたの生産性を低下させる。複数の子どもがいる場合、第一子は9.5%のパフォーマンスの低下を引き起こし、第二子はさらに12.5%のマイナスになる。第三子がいれば、さらに11%生産性が下がる。しかし低下は一時的なものであり、子どもたちが13歳に達すれば、母親たちは他のどのグループよりもはるかに生産的になる。しかも、その状態がキャリアを終えるまで継続するのだ。
 
そうした初期の歳月を、夜学のMBAで学んでいるようなものだと考えてみてはどうだろう。数年間は生産性が落ちるし、睡眠時間は減るし、ストレスも増す。しかしその見返りは、残りの職業生活を通じてずっと享受できる。
 
同研究によれば、父親となった男性にも一定の効能があるようだ。
 
子どもひとりの父親は子どものいない男性と同じような成績だったが、複数の子どもをもつ父親は、調査対象となった他の男性たちよりも生産性が高かった(生産性の向上率は女性たちほど劇的ではなかったが)。
 
周囲の状況(たとえば育児や老親の介護、病気の家族の世話など)が原因で生産性の大幅な低下を強いられたとき、人はたじろぐ。しかし最終的には、以前と同じ量の仕事を、より短時間でこなす方法を見つけられる。そして一度そのスキルを獲得すれば、一生それを保持できる。
 
ダービー・スマート社のニコール・ファーブCEOは、VCからファーストラウンドの資金調達を行ったとき、双子を妊娠中だった。両腕にひとりずつ赤ん坊を抱えながら会社をつくった経験から、彼女は自分の効率性に自信を深めた。

「起業の現場では『集中こそすべて(focus is everything)』だとよく言うけれど、母になる前は、その本当の意味をわかっていなかったんです。いまなら、たとえばこう思えるんです。今日、本当にシャワーを浴びる必要がある? たぶん必要ない。本当にワークアウトする必要がある? たぶん必要ない」

母性が鍛える4つの「筋肉」その2: スタミナ

女性は自らの能力を証明するために、男性以上に奮闘しなければならない。オフィスだけではない。女性や少女たちはそれをほぼ一生、経験し続ける。
 
08年、マイケル・ソコロフは女子スポーツ界の負傷率の高さの真相に迫る、畏怖と恐怖を誘う記事を『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』誌に寄稿した。
 
その記事によれば、男女の違いの一端は生物学だ。思春期になってテストステロンの分泌量が急増すると、男子はより少ない負荷で筋肉をつけることができるようになる。女子の場合はエストロゲンが似たような効果を発揮するが、つくのは筋肉ではなく脂肪だ。女子が筋肉をつけるには、男子以上に激しく鍛えなければならず、それで靱帯が疲弊して、ケガの危険性が増す。
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文 = サラ・レイシー 翻訳 = 町田敦夫 編集 = 杉岡藍

この記事は 「Forbes JAPAN 100通りの「転身」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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