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常識外れの「働き方」

しかし1つ気がかりなことがある。それは同社の「ゆるすぎる」社風だ。



就業時間は基本的に自由。ラウンジやカフェテリアなど、好きな場所で仕事をしてかまわない。ただし、昼食は全員そろってとるのが決まりだ。「普段、仕事であまり接点がない人とも話せるから、新しいつながりができて、信頼関係が生まれる」と、キャメロン。

クラブ活動も充実していて、サーフィンやロッククライミング、ランニングなど「らしい」ものから、ボードゲーム、ネイル、サーカスなど、変わった趣味の集まりまである。メラニーは「家族を連れて外国からやってくる社員もいる。自分が参加できるコミュニティを見つけて、新しいつながりを作れることが重要」と強調する。シドニー本社では従業員の30%が海外出身。社員の結束を強めるために、クラブ活動は欠かせないということか。



そして極めつきは、ゴール(目標)達成のお祝い。表彰状やボーナスアップなどではない。平和の式典さながら公園で白ハトを放ったり、スペインのお祭りよろしく「トマト投げ」をしたり、スプレーでフェイス・ペインティングしたり……。

「なぜこんな変なことをするかといえば、みんなにはゴールに集中してもらいたいから。ゴール達成を全員で祝うことで、個人同士が競争するのではなく、協力しようという雰囲気が生まれる」とメラニーは主張する。

驚かされるのは、こうしたイベントを企画する専門チームが存在するということだ。その名も「バイブ(雰囲気)・チーム」。「飲み会の幹事」のような持ち回りの雑務ではなく、シドニーとマニラにそれぞれ専任スタッフが10名ほどいるという。「彼らのゴールはみんなを幸せにすること。人は幸せで裁量をもっていると、最高の仕事をする」とクリフは誇らしげに語る。

さらに最近、新たな試みも始めた。社内に「コーチ」(カウンセラー)を常駐させ、仕事やプライベートなど、社員の相談に無料で乗っているのだ。

「マイケル・ジョーダン、ウサイン・ボルト、セリーナ・ウィリアムズ……。一流のアスリートには一流のコーチがついています。コーチの正しいサポートがあれば、自分の可能性を広げ、プロフェッショナルとしての成長につなげられる。それはビジネスでも同じはずです」とクリフ。利用は義務ではないが、「ほとんどの社員が申し込んだ。もっとコーチを増やさないといけないかもね」と笑う。

なぜここまで「働く環境」にこだわるのか。キャメロンは説明する。

「世の中には、『あ〜、今日も会社に行かなきゃ』みたいに、仕事を否定的に捉える人が多い。でもそうではなく、みんなが『行きたい』と思える場所にしたい。僕らは職場に対するイメージを変えようとしているんです」

今のところ、その狙いは成功している。

同社は昨年、「オーストラリアで最高の職場」ランキング(社員100名以下の部門)で3位に選ばれた。人材不足の世にあって、同社には毎月多くの入社希望者が殺到している。

文 = 増谷 康 写真 = ジェレミー・パーク

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