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最初の起業が「成功体験」に

創業のきっかけは2007年。メラニーが19歳の時にさかのぼる。

西オーストラリア大学(パース)でグラフィックデザインの魅力にとりつかれた彼女は、独学でPhotoshopやInDesignなどプロ御用達の制作ソフトの使い方を習得。だが操作が複雑なため、他の学生たちは基本的な使い方を覚えるのに何カ月もかかっていた。フェイスブックは誰でも簡単に使えるのに、デザインソフトはなぜこんなに複雑なのだろう。

そんな疑問を感じたメラニーはさっそく5,000豪ドル(約40万円)を借金し、恋人のクリフ(・オブレヒト)と、卒業アルバムをオンラインで簡単に自作できる学校向けウェブサイト「Fusion Yearbooks」を、実家の居間で立ち上げた。すると、これがヒットし、1年目に15校、2年目に30校、そして3年目には80校が採用した(現在もCanva運営の元でサービスは継続しており、卒業アルバム制作では国内最大手となっている)。

この成功に手ごたえを感じたメラニーは、大学を中退し、より本格的なデザインツールの開発に向けて、投資家たちからの資金集めに奔走する。だがここからが挫折の連続だった。投資家たちの反応は薄く、

「数百人に断られた」とメラニー。「シリコンバレーに来ることがあれば連絡して」と言われ、口実を作ってシリコンバレーまで大物投資家を訪ねたこともある。ようやく最初の資金調達に成功したのは、3年後のことだ。

もっとも、ただ無為に過ごしていたわけではない。この間、グーグルの元エンジニアであるキャメロンを共同創業者に迎え、ビジネスプランを練り上げ、ピッチ(プレゼン)に磨きをかけた。

こんな気づきもあった。

「オーストラリア人は自分の成功を控えめに語る。でもアメリカでは自分を積極的にアピールしないと、話すら聞いてもらえない。だからピッチではその点を意識して練習しました」と、メラニー。

また知人を通じて知り合ったオーウェン・ウィルソンやウディ・ハレルソンなどハリウッドセレブが、彼女のデザインに対するビジョンに賛同し、出資してくれたのも、口コミを広めるのに役立った。

そして13年8月に「Canva」を公開すると、アクセスが殺到する。最初の1カ月でなんと5万人以上が登録した。

そこからの成長は目覚ましい。翌年3月には、アップルの元エバンジェリスト(伝道師)であるガイ・カワサキが、Canvaの「チーフ・エバンジェリスト」として加わった。

また同年8月、顧客対応を強化するため、フィリピンの首都マニラに第2のオフィスを開設。「オーストラリアで素晴らしいカスタマーサポートのチームを作るのは難しいが、フィリピンだとすぐに見つけられる」とクリフ。

さらに15年8月、プロ向けに機能を強化した有料サービス「Canva for Work」をリリース。現在、顧客リストにはアマゾンやネットフリックス、イェルプなど有力テック企業が名を連ねている。

こうした「攻め」の姿勢が奏功し、昨年7月には黒字化を果たした。

文 = 増谷 康 写真 = ジェレミー・パーク

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