NYで牡蠣を食べて気づいた「アメリカンドリーム症候群」

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それはまるで麻痺した状態というか、パニック状態というか。それとも、夢見心地だったのでしょうか?

刺激物によって舌が麻痺した状態になると、人は味覚が鈍くなり、無意識のうちに塩や砂糖や脂を過剰に摂取してしまいます。それが続けば、中毒や依存にもつながります。

僕は、生活習慣病と言われるような糖尿病、高血圧、脳梗塞や脳卒中などは食事に原因があると考えていますが、よく言われる塩分や糖分だけでなく、味覚を麻痺させるこうした刺激物が実はなかなかの悪因ではないかという気づきとなりました。

コロンブスが犯したミス

夢を探しに、または刺激を求めてアメリカにやってきて、機会が平等なこの地で成功をつかむことはアメリカンドリームと言われます。

でもその一方で、日々の食事で少しずつ味覚が麻痺し、味の濃いものや油っぽいいものを求めるサイクルから抜け出せなっていく。それはある意味、資本主義の社会構造に飲み込まれているようで、こうして身体が蝕まれていくのは、名付けるなら「アメリカンドリーム症候群」という感じでしょうか。

とはいえ、これはアメリカに限った話ではありません。現代を生きる僕たちは、気候風土の中で育まれた食材や文化から離れ、気づけば世界中どこでも同じような料理を食べ、同じような病気に苦しんでいます。もしかしたら、コロンブスが新世界を発見したことで、現代病という病の引き金を引いてしまったのかもしれません。

中でもトウガラシは、チリペッパーと名付けられ、ペッパー(胡椒)のように親しまれたことで世界に広がりました。似たような現象は僕の故郷の九州にもあり、九州の名物でもある柚子胡椒は「胡椒」という名ですが、唐辛子と柚子を練り合わせて作られています。九州の人のお酒の飲む量が多いのは、チリペッパーが味覚障害を起こしているからかもしれません。



こうして考えると、コロンブスの時代まで戻って、それまで各地で育まれてきた料理や食材を見直すことが、このグローバル社会の中でのアイデンティティの再認識に繋がるのではないかと思います。国に根付いた料理や食文化を見つめると、僕らが脱却しなければいけない味や、大切に育まなければいけない味がなにかが見えてくるからです。

この連載のタイトルでもある「喰い改めよ!!」ですが、そのためには、ある時代まで戻って歴史や文化を見直すことが一つのヒントになると、ニューヨークの牡蠣をきっかけにより強く感じました。

ちなみに、コロンブスの“ミス”を指摘するような内容になりましたが、人と違うことをした彼はかわらず、僕の永遠のアイドルです。彼の思想に沿いながら、そこに現代ならではのデータやリサーチを加え、専門家を巻き込みながら、食と健康のために革新的なことをしていきたいです。

連載:喰い改めよ!!
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文=松嶋啓介

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