オーストラリア・アデレード出身のジョンさんはワインコンサルタントとして、イスラエル、ロシア、メキシコ、南アフリカでも働いているほか、これまで世界各地でワインの醸造に携わってきた。
ジョン・ウォルンシャックさん
「イギリスのスパークリングワインは、間違いなく世界最高で、将来的には繊細さと複雑味のある素晴らしい白ワインの産地になる可能性がある。この地域での本格的なワイン造りの歴史はまだ浅く、とてもエキサイティングだ」と語る。
実はイギリスは、ワインの有名な産地としては知られてこなかったものの、現在のワインやシャンパーニュ造りに欠かせない技術を発明した国でもある。
「瓶内二次発酵を発明したのは、一般的にはドン・ペリニョンと言われていますが、実際にはドン・ペリニョンがシャンパーニュ造りを始める前の1662年に、イギリスのクリストファー・メレ氏が『くるみほどの大きさの砂糖を瓶内に入れることで瓶内二次発酵をさせる』と書いた書類をロンドンのロイヤルソサエティに提出しています」
それだけではない。「シャンパーニュのガスの内圧に耐えられる瓶は、フランスで“ヴェール・アングレーズ(verre Anglais、イギリス人のガラス)”と呼ばれる通り、1620年代にイギリス人のケネルム・ディグビー卿によって発明されたもの。イギリスがシャンパーニュに与えた影響は大きいのです」と、前出のハイ・クランドンのエマさんは強調する。
デンピースの広大なぶどう畑
ぶどうは通常秋に収穫され、そこからワイン造りがスタートするが、イギリスワインの生産促進機構、ワインズ・オブ・グレート・ブリテンによると、好天に恵まれた今年は通常より約2週間早く8月下旬から収穫が始まっており、記録的な豊作になると予想されている。
この2年間だけでも、イングランドとウェールズ地方だけで250万本ものぶどうの木が植えられており、2040年までに、イギリスワインの年間生産量は4000万本に到達すると見込まれる。
古くからワインの流通の中心地として栄えたイギリスだが、今度はワインの生産地としての覇権を誇ることになるのか。温暖化は、今後のワインの生産地図にも、大きな影響を与えそうだ。