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2018.09.29

メジャーで愛される日本人グローブデザイナーと忘れられない戦い

ウィルソン スポーティンググッズ社のグローブデザイナー 麻生茂明氏(左)とアストロズのホセ・アルトゥーベ選手


僕がこの場所を初めて訪れたのは、2014年の冬だった。メトロドームは、2009年にツインズがターゲット・フィールドに移転して以来バイキングスが唯一のテナントだったが、2013年のシーズン終了と共に去り、2014年1月に解体が始まり、同じ場所に2016年オープンのUSバンク・スタジアムが建設されることになっていた。

つまり、僕が初めて訪れる直前にドームは解体され、瓦礫の山となっていた。歴史ある球場が取り壊された寂しさと、ここに新しく完成する新球場への期待が入り交じりとても複雑な気持ちだった。


USバンク・スタジアム(Getty Images)

2018年のNFLのスーパーボウルは、新しく完成したUSバンク・スタジアムで行われた。メジャーのワールドシリーズは、ナショナルリーグとアメリカンリーグの勝者の本拠地で開催されるが、スーパーボウルは、完全持ち回り制となっている。

この巨大スタジアムの収容数は6万6000人。バイキングスの本拠地としてだけでなく、多目的スタジアムとして、コンサートはもちろんのこと、ミネソタ大学のゴールデン・ゴーファーズ(NCAA所属の大学野球チーム)の公式戦も冬の間限定で行われる。

USバンク・スタジアムのホームプレートは、メトロドーム時代と同じく南東の角にあった。これは重要なポイントだ。メトロドーム時代と同じ場所、同じ空間、そして、同じ方向を向いて、野球の公式戦が行われるからだ。3年間の時を経て、失われた球場が復活し、パケットがプレーしたフィールドが蘇った。

映画「フィールド・オブ・ドリームス」ではないが、パケットがレフト・フェンスの中から突然現れてきそうな気がした。そして、自分が立っている客席は、1991年のワールドシリーズで地元のファンが無心にホーマー・ハンキーを振り回していた場所だ。時代は異なるが、彼らと空間を共有している気がした。

連載 : 「全米球場跡地巡り」に感じるロマン
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文=香里幸広

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