衰退するリアル書店 データとAIは救世主になるか?

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書店が減少の一途を辿っている。日本著者販促センターや調査会社アルメディアなどによると、2000年に約2万1500あった日本の書店の数は、2018年の5月時点で約1万2000店にまで激減。また、取次大手トーハンが2017年に実施した調査によれば、書店が1軒もない市区町村の割合が全国で2割以上に達したという。

程度の差はあれ、海外各国でも事情は似通っている。ECサイトや電子書籍の普及が進み、流通や情報コンテンツそのものの在り方が変化するなか、リアル書店は少しずつ地球から消えさりつつある。

時代の流れで致し方ないと言われればそれまでだが、街の書店で新しい本に出会う喜びに慣れ親しんだ人々にとっては、少し寂しい話ではないだろうか。出版関係者にとっては、業界の衰退に直結する抜き差しならない問題である。

中国で広がる「無人書店」

そんななか、中国ではビッグデータと人工知能を使った「無人店舗」に、リアル書店の生き残りをかけようという動きが活発になりつつある。今年に入って、北京発行グループは北京通州区に中国初となる「AI書店」をオープンさせた。

また5月には、アリババが上海に「志達書店・天猫未来店」という無人書店を設置。中国の国営書店である新華書店も、アリウィン(阿里云)と提携し、「新華生活+24時間無人スマート書店」の営業を開始している。

新華書店は国内最大の書店チェーンで、中国では80年以上にわたり書店業界の牽引してきたが、従来の方法では生き残りが難しいと判断。自動化技術など、先端テクノロジーを店舗運営に取り入れていく決断を下したという。新華書店側は、2018年中に20店舗まで拡大することを目指すとしている。

中国の無人書店には、顔認識技術や行動検知技術などが採用されており、顧客が来店すると、過去の購入履歴などから好みや趣向に合った書籍を推薦してくれる仕組みになっている。決済や盗難防止策もシステムとして無人化されているのが特徴だ。

なお中国の出版社は昨今、読者の性別、年齢、職業、レビュー、評価、本一冊を読み終わる時間などを分析。新たに出版するコンテンツの販売動向を予測し、出版するか否か最終判断する傾向が増えているそうだ。今後、それらECサイトやデジタル書籍などオンライン上の動向から得たビックデータが、リアル店舗の運営に活かされていくことは想像に難くない。
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文=河 鐘基

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