とはいえ、それら無人店舗の着想はあくまで、書店運営の効率化、経費削減を目指すという地点にとどまっている感も否めない。言い換えれば、流通・小売、またコンテンツ自体のデジタル化が進むなかにあって、「書店が絶対に必要」という結論を導き出すためには少々弱い気もする。
ここからは個人的な考えだが、今後、書店運営に人工知能、もしくはビックデータの活かすならば、「リアル書店だからこそ得られるデータ」に着目してみるとメリットが大きいかもしれない。例えば、「立ち読み時間」や「本を読んでいる際の読者の表情」などがそれにあたる。
プライバシー問題もあるかもしれないが、それらオンラインでは決して得られることができないそれらデータは、書店を「本を売る場所」から、「読者データの宝庫」に変化させてくれる可能性を秘めている。データを販売する先も何も出版社に限ることはない。「人々が何に関心を持っているか」をデータとして集められれば、あらゆるビジネスと連携可能になるはずだ。
そのような考えはいまのところ“空想”にすぎないが、無人書店の登場はその実現にいたる技術的な用意が整い始めている予兆でもある。いずれにせよ、古き良きものの消滅は、危機感や哀愁だけでは止められない。書店という場所に新たな経済合理性が求められている。
連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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