英国紳士に愛されてきた、イングランドの名コース

ウッドホール・スパ・ゴルフ・クラブ


1919年、第一次世界大戦の影響でゴルフ場の運営が窮困した際、大戦の中で大佐にまで上り詰めていたスタッフォード・ホッチキンが金融面で支援することへ同意。ゴルフコースの建築に大きな関心を持ったホッチキンは、ゴルフコース設計事務所を自ら設立し、コースの改善に努めた。
 
彼自身は1953年に亡くなったものの、息子のニールが意思を引き継いだ。ニールはイングランドゴルフ協会に大きく貢献し、最終的には理事長という要職へ1972年に選出されている。1995年にはイングランドゴルフ協会の拠点がこのゴルフコースへ移され、2つ目のコースとして「ブラッケン」が1998年にオープンする際、元からあったコースが「ホッチキン」と改名された。
 

自然に囲まれるコースには時に野鳥も見られる

我々がプレーした日は快晴にも恵まれ、最高のラウンドになった。コース上はエレベーションなどの起伏には富んでいないものの、長くて狭い難しいバンカーがいたるところにあった。ゴルファー泣かせだが、挑みがいのあるそのタフさがゴルファーには最上の喜びとなる。そんなところが、英国人気質にも合っているのであろう。
 
グリーンは比較的フラットで、パー3は3つというこのコースはしっかりしたティーショット、セカンドショット以外はヘザーやバンカーに苦しむことになる。

地元クラブのクラブ対抗選手権の選手だというスティーブと一緒にラウンドしたが、コースを熟知しており、その戦略性の確かさと腕前は本物だった。そんな彼を見ていると、本当にゴルフというスポーツが英国人に愛されているというのがわかる。スティーブ自身が「いつプレーしても飽きないし、このコースが世界一だと思う」と言っていたのもうなずける話である。
 
また、このホッチキン・コースは環境の面からも重要な地域ということで、SSSI(Site of Special Scientific Interest)という特別保護区域に認定されている。地域の木々、草花、小動物などの保全に努めるという、ゴルフコースと自然保護がしっかりと同調している姿を目の当たりにし、英国に根付くゴルフの歴史の長さと英国人の取り組みに深く感銘したラウンドとなった。

イギリスの至宝ホッチキンをプレーせずに、天国へ行くことなかれ!


こいずみ・やすろう◎FiNC 代表取締役CSO/CFO。東京大学経済学部卒。日本興業銀行、ゴールドマン・サックスで計28年活躍。現役中から、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢・発起人、TABLE FOR TWO Internationalのアドバイザーなど社会貢献活動にも参加。お金のデザイン社外取締役、WHILL、FC今治のアドバイザー。

文=小泉泰郎

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