英国のスタートアップが米国進出を図る場合、まず考えるのがシリコンバレーにオフィスを構えることだが、デュシーはアリゾナ州のほうが断然、メリットが大きいと説得している。
アリゾナ州はフィンテック企業らに対し、金融分野の規制を緩和し、必要な場合はオフィスも人材も提供する、「フィンテック特区」として売り込んでいる。同州の州都フェニックスのビジネス開発部門を統括するDarryn Jonesは、ロンドンのテック企業向けのイベントを開催し、英国のフィンテック企業の海外進出を後押しする。
Jonesが英国企業にまず伝えるのは、シリコンバレーの恐ろしいまでの家賃の高さだ。少ない資金で運営するスタートアップ企業にとって、カリフォルニア州の家賃相場の高さは大きな障害になる。
しかし、アリゾナ州のフェニックスなら低い家賃で広々としたオフィスが持て、従業員の住環境も素晴らしい。そして、何よりも大きな利点は、フィンテック特区に指定されたアリゾナ州では、企業は煩わしい規制を受けずにアイデアを試せる点だ。
アリゾナ州は米国で初めて、フィンテック分野の規制を緩和し、当局の認証なしで最大2年の間、プロダクトの試験運用を行うことが可能になった。また、このプログラムに参加した企業には、特区が拡大した場合、優先的にそこに参入する権利が与えられる。
テクノロジー企業が密集する「グレート・フェニックス」と呼ばれるエリアに本拠を置くテック企業の数は、過去7年で66%の増加となり、地元の大学を出た人材も多数いる。フェニックスは他の米国の都市に比べ、この分野の起業に適しており、アリゾナ州は一丸となって、テクノロジー系企業の誘致を行おうとしている。
英国のフィンテック企業の一定数は、今後もシリコンバレーを目指すだろう。しかし、家賃の安さや人材獲得の容易さ、そして規制に縛られない特区としての魅力は多くの企業にアピールするはずだ。米国を目指すテクノロジー企業が本拠を置くべき場所は、シリコンバレーだけではないのだ。