ビジネス

2018.09.21 07:00

ネットフリックスが明かす、「自由と責任」の文化を築くための秘訣

ネットフリックス 人事部長の山本薫


優秀な人材が実現する「チーム力」
 
ネットフリックスは優秀な人材を採用した後、彼らにどのような環境を与えるのだろうか。
 
「ネットフリックスは自由と責任を与えます。知識や経験値があり、ネットフリックスのビジネスを良くしようと思っている人材であれば、会社のビジネスにおいて、いまこのときに何が適切かを判断できます」
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優秀な人材だからこそ、下手に制約を設けるのではなく、自由と責任を与える。その人なりに考えてもらって、あとは実行に移してもらう。ネットフリックスでは、それを「チーム力」と呼んでいるという。
 
「自由と責任を与えますが、会社が求める一定の価値観は存在していて、社員はこれを体現することを求められます」

例えば、ネットフリックスにはこんな価値観がある。

「curiosity(探究心)」──いまこの瞬間、自分はどんなことが求められているのか。もしくは相手がどのような目的でアクションをとっているのか、探究心を持ち、理解を深める。
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「Selflessness(利他主義)」──私利私欲を優先するのではく、常に会社にとって何が最も良い選択なのかを考えて行動する。
 
「上記のように、いくつかの価値観があり、それを体現しながら仕事を進めていくことをネットフリックスは常に求めています」
 
社員の「自由」を謳うネットフリックスにおいて、職場環境にはあらゆる制約がない。例えば、社員はあらゆる部署のミーティングに参加することができ、それを不思議に思ったり、咎めたりする人はいない。

マーケティング部門の社員が、自分に広報の知識が必要だと判断したのであれば、広報部門の会議に参加することができる。

それを可能にするために、全社員のスケジュールは常に開示されており、誰でもアクセスできる。数多くの作品のプロモーション会議に必要あらば自らの意思で参加して、貢献するかどうかは自分次第なのだ。
 
その自由な環境下で社員が判断する基準はたったひとつ。
 
「What’s best for Netflix?」
 
会社にとって何がベストか──言葉にしてみたら簡単なことのように聞こえるが、それを常に考え、最適な行動を選択するのは難しい。なぜなら、時代の動きによって常に「何がベストか」は変わるからだ。

だからこそ、ネットフリックスは大きな方向性を定めておき、何が最適な選択かどうかは優秀なそれぞれ社員が判断し実行に移せるようにしている。

「意思決定を下すために必要な情報はすべて開示しますし、何を判断材料とするかもその人に委ねます」

仮に上司が社員の意思決定に反対の考えを持っていたとしても、その社員が正しいと思っているのであれば、止める人は誰もいない。自らの意思で実行に移すことができる。

「もちろん、しっかりとした議論をし尽くした上での話にはなりますが、最終的な判断は100%個人の決定に委ねられています」
 
社員は大きな自由と決定権をもっているが、そこには同等の責任も含まれている。もし何か失敗をしてしまった場合、どのような対応がなされるのだろうか。
 
「失敗は全然OKです。むしろ失敗は大歓迎。大事なのは失敗から何を学んだのか。私たちは常に新しいものを生むことが求められている。何かのデータに基づき、リスクを回避していたら、面白いものは生まれません。そのため『リスクテイキングしてください』という伝え方をしています」
 
この施策が当たると思い、多額の予算を投下してみたら、想像よりもうまくいかなかった。そういう事例はネットフリックス社内に数多あるという。

「失敗に対して、なぜうまくいかなかったのか、どうしたらこの経験を次に役立てられるのか、に重きを置いているので、社内でも失敗を責めることはない。『その失敗を今後はどういう風に役立てるの?』と解決策につながる働き方を促しています」
 
どうやってカルチャーを浸透させているのか?
 
優秀な人材が、自由と責任を与えられて高いアウトプットを行うことができる。
 
それは理にかなっているように感じるが、会社のもつカルチャーをここまで個々人が徹底できているのはなぜなのか。
 
ネットフリックスでは、相手に面と向かって言えないことは、裏でも言ってはいけない。フィードバックするカルチャーを持ち、相手に改善してほしいことがあれば、必ず直接伝える。そんなフィロソフィーが根付いている。しかし、どれほど優秀であったとしても、人間だ。伝えにくいな、と思ったり、上司に対して面と向かって言ったりするのは憚られる、という瞬間もあるだろう。
 
「もちろん、人間ですから伝えづらいと思う瞬間はあると思います。『相手を傷つけたくないな』とか『言いづらいな』と思うことがあるのは当然でしょうし、それをあえてやってください、というのが文化でもあるので、そこは努力や時間を費やすことが必要です」

面と向かって言いたいことを言えるようにするため、ネットフリックスが導入しているのがオンライン上でフィードバックを行う仕組みだ。

フィードバックする相手を自分で決めることができ、フィードバックの回数は無制限。フィードバックは一斉に行われるが、その結果は1年中、見ることができ、上司が結果を見て改善ポイントを知ることもできるという。
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文=園田菜々 写真=若原瑞昌

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