企業文化や社員の行動規範が書かれた同文書は現在、企業文化の具体的な体現方法を示した”カルチャーメモ”へと進化し、同社の採用ページに掲載されている。
そこには、上下関係のない公平性や、スキルを持ち、お互いのことを信頼しあう“ドリームチーム”など、一見「本当にそれは実現されているのか?」と疑ってしまうほどに自由な企業文化が示されている。
最近、かつてネットフリックスの最高人事責任者を務めたパティ・マッコードの著書『NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く』が発売され、再びネットフリックスの企業文化に注目が集まっている。
果たして、ネットフリックスの企業文化はどうなっているのか?「自由と責任」を重視する考えは、日本国内でもワークするのか──同社の人事部長 山本薫に話を聞いた。
大切なのは「優秀な人材」を採用すること
そもそも、ネットフリックスが独自のカルチャーを築き上げる上で、“最も大切にしていること”は何なのか。山本氏はこう語る。
「何よりも採用が大切です。ネットフリックスは、その人のポテンシャルを見るよりも、即戦力かどうかを見ています」
山本曰く、ネットフリックスが定義する優秀な人材は「ある分野において圧倒的な経験値と知識を持っていること」だそう。
「ネットフリックスは先端的なアイデアや行動力をもっている人を求めています」
“優秀な人材であること”を前提とした上で、ネットフリックスはつぎに、どれだけカルチャーマッチしているかを見る。
実際、採用面接ではその人の能力だけでなく、カルチャーフィットするかどうかを多角的な視点からチェックするという。
「スキルセットとカルチャーフィット、この両方を兼ね備えていることが大事。どちらかしかない場合、ネットフリックスのチームの中で活躍していただくのは難しいかもしれません」
ネットフリックスが即戦力で優秀な人材を採用することに重きを置く理由──それはCEOのリード・ヘイスティングスが経験した、ある現象まで遡る。
2006〜2007年頃、ネットフリックスは資金繰りに困り、当時絶対に必要と考えた優秀な社員80人を残し、それ以外の社員は全員解雇せざるを得なくなってしまった。3分の1ほどの社員がいなくなったため、当時はリソース不足が懸念されていたが、いざ仕事をしてみると、以前よりも生産性が向上していた。
足を引っ張ったり、仕事をサボったりする、非生産的な人材がいなくなったことで、かえって社員のモチベーションも高くなり、ビジネスへの貢献度が上がったのだという。
そうした事実を知った、リード・ヘイスティングスはこう思った。優秀な人材だけを揃えて、彼らに「自由と責任」を与えれば、社員の士気が高まり、良いアウトプットをしてくれるのだ、と。
山本は「その経験があったからこそ、いまのネットフリックスのフィロソフィーが生まれたのだと思っています」と言う。
現在は同社採用ページに掲載されている”カルチャーメモ”