キャリア・教育

2018.09.27 11:00

スタートアップ×世界トップ学生×日本企業3者が生み出すオープンイノベーション

写真=ブライアン ホーイ


変化する世界で勝つためにブロックチェーンで日本を変える!NexGen世代にこそ、わかってほしい─この国が志向してきた中央集権・一元管理・団体主義はブロックチェーン技術で過去になる。
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写真=山田大輔

CASE 3 BCTL BCテクノロジー研究所

「まず最初に仮想通貨が世に出たことは、ブロックチェーンにとって不幸なことだったかもしれません。私自身、これまでに何度かICO(新規仮想通貨発行による資金調達)にも関わってきたので、危ない、いかがわしいといったイメージが広がることは心外なのですが、仮想通貨はブロックチェーンの応用例のごく一部。新しい応用例がどんどん出ていきますから、これからの展開にワクワクしています」
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そう語るのは、BCテクノロジー研究所(BCTL)の深田陽子代表取締役社長兼CEOだ。社名のBCはビットコインではなくブロックチェーンの略。BCTLは、ブロックチェーン技術やそれを用いたサービスの開発を自ら手がけるほか、ブロックチェーンの活用に挑戦する企業や行政へのコンサルティングも行う。

今年3月に設立されたばかりながら、メンバーは経験豊富なプロ揃い。経営陣には、世界的AV機器メーカーで民生用カメラの画像処理アルゴリズムの開発などを手がけ、社内の新規事業立ち上げにも携わってきた深田をはじめ、現役の大学教授や外資系金融企業の幹部経験者などが顔を揃え、技術はもちろん、経営や営業の面までがきっちりカバーされている。

事業の立ち上がりも順調で、「ブロックチェーンを使ってみたいという声がとにかく多いですね。航空や不動産、人材派遣、デジタルコンテンツといった業種の大手や医療機関、地方自治体とお仕事をさせていただいています」と深田は語る。

ブロックチェーンの大きな特性のひとつは、データの改竄が不可能になること。真贋のチェックが容易になってデジタル情報の信頼性が高まることにより、電子取引において認証機関や取引所といった“中間”を介することなく著作権管理が容易になるといったメリットも生まれる。そのため、個人情報の扱いが多かったり、電子取引を頻繁に行ったり、著作権管理が重要だったりという組織が特に強い興味を持っているという。

だが、ブロックチェーンの威力は、ビジネスや行政の業務を効率化するといったレベルにとどまるものではない。ブロックチェーンが世界を変えていく影響力の強さについては、将来、証券取引所から中央銀行、政府までを無用の長物に変えてしまうとの予測さえある。

深田も、「ブロックチェーンで日本を変えたいという意気込みを持っています。というより、世界がブロックチェーンで急速に変わっていくなかで日本が変わらないと、日本の未来は暗いですよ」とし、次のように続ける。

「日本ではまだ中央集権・一元管理・団体主義が根強く残っていますが、ブロックチェーンは国や組織のそういうあり方を壊していく技術。地方分権・分散管理・個人主義が主流だった欧米だけでなく、日本以上に中央集権や一元管理が難しい中国や韓国もブロックチェーンに力を入れています。日本はうかうかしていられません」

とはいえ、深田は日本に絶望しているわけではない。むしろ、大きな期待を持っている。

「ブロックチェーンでも技術開発の面では日本人がとても大きな貢献をしていて、世界をリードしているくらい。そういう技術での優位が組織や国の変化、新しいビジネスの登場につながりにくいことが問題です。しかし、その壁を壊せば、日本にも日本人が活躍する道が見えてくると考えています」

創業間もないBCTLがNexGenに参加した背景にも、深田が若い世代に抱いている期待がある。

「参加を決めた理由は、BCTLのプレゼンスを若い世代に示したかったこと、ものすごく不足している人材の採用に役立つと考えたことなどいくつかありましたが、実際に学生さんたちと接してみて、『日本にもこんなに優秀な学生さんがいるんだ』と再認識できたことも大きな成果でした。仕事でエンジニアを見ていても、日本の若い人は本当に優秀で、彼らが大企業の中で年収1000万円を目指しているのはもったいない。自分でビジネスを立ち上げて世の中を変えて、1億、10億円と稼ぐという働き方、生き方が海外には普通にあります。彼らのポテンシャルをもっと引き出すことができればと思います」

深田はこう続ける。

「ブロックチェーンは国や組織を変えるだけでなく、個人の生き方、働き方も変えていきます。たとえば、日本の企業は重要なデータを扱うスタッフを社内に留めておきたがりますが、ブロックチェーンを使えば情報漏洩のリスクが格段に下がってテレワークが可能になる。企業にとって多様な働き方を認めるメリットの方がますます大きくなります」

実は深田自身、今も世界的AV機器メーカーに籍を置き、仕事を続けながらBCTLを創設し、率いている“兼業CEO”。BCTLとその企業には資本関係がなく、深田以外に両社共に籍を置く人材もいない。異例なほどの自由を深田に認めた点から、深田とBCTL、そしてブロックチェーンに対する、その企業の経営トップの期待の大きさがよくわかる。

深田とBCTLは、ブロックチェーンで変わることができる未来の日本を、いち早く体現している。


BCテクノロジー研究所

画像処理技術の開発や新規事業の創出を手がけてきた深田陽子らによって今年3月設立。ブロックチェーンの技術・サービス開発と、ブロックチェーンの活用を目指す企業などが対象のコンサルティングを手がける。

深田陽子◎BCテクノロジー研究所代表取締役社長兼CEO。AV機器メーカーにて、世界初のイメージング商品・サービスの開発を手がける。暗号通貨術・ブロックチェーン技術の会社を複数ファンディングし、ICOプロジェクトCTOを歴任。


文=フォーブス ジャパン編集部、岡田浩之

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