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今年で5回目を迎えた「NexGen」。日本の参加企業は、「既成概念を壊す体験」を求め、シンガポール、マレーシアへ。発展するアジアの可能性、現地スタートアップとの協業の可能性を探りに出た。


CASE 1 NexGen ネクスジェン


3日間にわたるツアーには、シンガポールのスタートアップ集積地「One North」やマレーシア南端部、ジョホール州の大開発「イスカンダル計画」の見学も含まれる。参加者たちは、今後、アジアのビジネスにおいて重要な位置付けを担う現地のエネルギーを体感できたと語った。

今年で5年目を迎えた「NexGen」のテーマは「ブロックチェーン」と「トランスフォーミング」。イベントのホストである「BCテクノロジー研究所」と「東京電力ベンチャーズ」の事業の軸となるキーワードでもある。事前に、主催者のNexGen事務局とホスト企業が一体となり、学生たちとどう協働するか、ファイナルイベントでどう参加者とディスカッションを進めるのかを議論し、最終日を迎える。Forbes JAPANは、メディアパートナーとして株式会社アクティブラーニング(代表 羽根拓也)主催のこのプログラムを取材するのは3年目となった。

ホストとなった企業は、面接を突破した海外の優秀学生をインターン生として迎え入れる。彼らは2週間という限られた期間の中で、企業のことを学び、さらに新規事業案を提案する。


開催5回目となる今年も、ハーバード大学、スタンフォード大学、エジンバラ大学、シカゴ大学などをはじめとした、世界トップクラスの大学から学生たちがプログラムに参加した。



NexGenには、日本の経産省の他、昨年からシンガポール、今年からマレーシアの政府関係機関も全面協力している。シンガポールのツアー中には、現地のスタートアップ関連施設の見学、スタートアップ創業者らとのミーティングも実施された。今年の目玉は、マレーシア最大の開発「イスカンダルプロジェクト」の「Medini」地区の見学。最先端都市として完成されたシンガポールとこれからの開発地域である「Medini」を対比見学することで、アジアの大いなる可能性を探ることが狙いだ。

2カ月にわたるNexGenのファイナルイベントは、シンガポールのスタートアップの集積地、OneNorthで開催された。最終発表会最大の特徴は、参加者が公募によって集まった人だけではないということ。会場の「Bash」には、世界的に有名な投資会社、IT企業の新規事業開発担当者、さらには現地大学の学生ら、精鋭100名が集まった。

まず、ホスト企業が自社の新規事業案を、その後に学生たちが2週間かけて練り上げたアイデアを発表。さらにその会場にいるすべての参加者でそのアイデアに対するディスカッションを繰り返す。


7月6日の東京大会は「銀座Lapis Tokyo」にて。スタートアップ、日本企業の社員たち、インターンシップを終えた学生たちのプレゼンとワークショップが5時間半にわたり行われた。

「BCテクノロジー研究所」からの課題は、「これまでにない、ブロックチェーンを活用したビジネスモデル」を考えるというもの。

「学生が大学に提出する論文を、ブロックチェーンで管理することもできると思う。論文のアイデアは誰のものかということを考えたとき、それは誰が一番最初に世に出したかが基準になる。仮にそれが、元は誰かのアイデアだったとしてもです。そうした権利問題の解決にも、ブロックチェーンの技術は応用ができるのではないでしょうか」

この意見に「BCテクノロジー研究所」代表の深田陽子はこう感想を残した。

「日本ではまだ、ブロックチェーンというと仮想通貨のイメージが強い。でも、学生が考えてくれた権利管理の問題や、他の産業にも大いに活用できる可能性があるんです。そこを感じ取っている学生がいると、この業界の将来が楽しみになります」

続いて「東京電力ベンチャーズ」からの課題は「ドローンの物流以外の事業の可能性」。

参加者から、またも斬新な意見が飛び出した。

「地域活性化を目指す自治体がドローンのレースを開催したら、全国から見物客が集まるかもしれない。VRを利用して『ポケモンGO』みたいにドローンのいく先々に目標物を配置する。それを獲得しながらスピードを競うゲームも現実可能だと思う」

「東京電力ベンチャーズ」代表の赤塚新司は「未来のゲームのあり方までは想像がつかなかった(笑)。社内の議論では絶対でてこない、期待通りの自由な発想です」と笑顔を見せた。

企業と学生たちが互いに意見を交わしているうちに、3時間半のプログラムはあっという間に終了。今年のNexGenは幕を閉じた。

柔軟な視点をもつスタートアップ企業も、見えない枠に囚われているかもしれない。そこに学生のアイデアが加われば、事業の可能性はさらに広がるだろう。来年のNexGenは、アメリカにも進出する予定という。既存のビジネスにはない新たな視点を得たい日本企業に新しい可能性をもたらすはずだ。


ツアー中は、ワークショップや発表会の時間外でも企業と学生の交流が盛んに行われた。日本から参加した企業は、現地スタートアップ企業との個別の会合から、今後のビジネスチャンスを見出したという。

マレーシア政府が推進するイスカンダル計画とは

シンガポール中心部から車で約1時間の場所に位置するマレーシア・ジョホール州で「イスカンダール計画」進行中だ。

プロジェクトがスタートしたのは2006年のこと。完成を予定している25年までには人口300万人を見込む。

面積はシンガポールの約3倍。住宅、オフィス、商業施設、ホテル、病院などの施設を集中的に建設し、その中心エリアにあたるメディニ地区は国際金融センターを目指す経済特区となる。

そのメディ二地区の開発の出資企業には、三井物産も含まれる。「メディニ地区スマートシティ開発プロジェクト」に携わっているのだ。

新たな都市を開発するにあたり、掲げた4つのヴィジョンが「Safe(安全)」「Connected(繋がり)」「Liable(住み易さ」)「Efficient(効率化)」だ。

市民の安全のため、要所要所に日本の交番のような警備員が常駐するガードスポットや監視カメラが設置される。環境を考慮し、オフィスビルにはソーラーパネルを導入。住民同士を繋げる役割を担う「ソーシャルハブ」として、ポータルサイトを開発し、また、フードトラックも配置する。

シンガポールは、開国から約50年で世界のビジネス中心地へと発達した。開発初期から技術面だけでなく、スマートシティというインフラ整備を計画に組み込んだメディニ地区が、世界のビジネスに大きなインパクトを与える日はすぐそこまできている。


ツアー2日目には、バスで国境を越え、イスカダール・メディニ地区へ。建設途中のオフィスビル、大学などを多く目の当たりにした。

文=フォーブス ジャパン編集部(P118-120)、岡田浩之(P121-123) 写真=ブライアン ホーイ(P118-120)、小田駿一(P121)、山田大輔(P123)

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