半面、これからの課題もある。EUなどに倣って、トレーサビリティ(追跡可能性)の証明を法制化すること。そして、漁獲規制を輸入品にも適用すること。この2点が実現しなければ、豊洲で扱う水産物も、持続可能性という面から適正に漁獲されたという証明ができないのだ。
日本の排他的経済水域(EEZ)は世界第6位、そこには4200種を超える魚種が集中する豊かな海が存在する。しかし資源量が高位にある魚種はわずかに16.7%だ。例えば、太平洋クロマグロは約8割を日本が消費している。また保護すべき主な産卵場は日本の海域にある。この資源が1950年以降96.7%も激減したのは日本の責任に他ならないだろう。
水産業の活性化、漁業者の生活確保、経済成長に向かって水産物の輸出促進のためには、まずは資源の回復が火急の命題であることは間違いない。
築地から豊洲へ、期待されること
江戸時代から続いていた日本橋魚河岸が、関東大震災で壊滅した後を受け、1935年に開設された築地市場、その歴史に幕を下ろすときこそが、古い日本の水産行政への決別の好機でもある。
市場の真価は建物の新旧にはなく、その流通だけにとどまらない未来への「役割」にもある。とくに海洋資源の持続可能な消費に対しての責任は大きい。その大切な役割を担えなければ、相対取引で船から直接買い付ける市場を通さない流通の増加につれ、新市場の価値も大きく損なわれるだろう。
国際スタンダードに近づける新しい市場の在り方を模索し、豊洲市場は国による法制化に先駆け、自主的に持続可能性に向けたコンセプトを打ち出し、トレーサビリティの確保を実現するべきだ。
連載:海洋環境改善で目指す「持続可能な社会」
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