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海洋環境改善で目指す「持続可能な社会」


メルカバーナは水産部、食肉部、青果部、花卉部を擁し、多目的パビリオンや博物館などの付帯施設も充実している。さらに教育や広報活動にも力を入れており、児童向けの教育研修、プロ向けの夏期大学の開催、さらにはレシピ本の刊行やサステナビリティレポートの発行も手掛けている。

市場内にはレストランが15店あり、筆者が案内された店は、ガラス張りの窓から市場の様子が見渡せ、たったいまセリ場から運ばれた新鮮な魚介類がスペイン風に調理され、これでもかというほどの大盛りで供される。



メルカバーナ市場では、市場の役割自体が日本のそれよりもはるかに高度で多様性に富んでいる。

日本に求められるトレーサビリティ

EUでは持続性を中核に置いた共通漁業政策(CFP)により漁獲規制が敷かれており、2010年からすべての水産物には漁獲証明書の付帯が義務付けられている。これにより漁獲から移送、出荷までの生産及び流通の流れについて、政府が確認したことが示されるのである。漁業者が各国で認可された業者かどうかも証明される。

ここバルセロナの市場でも、EUの法律に従って、水産物の上に漁獲証明の白い紙が載せられている様子が見られた。このLabel of Catch Documentationと呼ばれる紙には、魚名、ラテン語による魚名(学術名)、船名、FAOコードで示される漁具、魚のサイズ、天然または養殖、販売形態(丸ごとまたは切り身など)、などのさまざな情報が記されている。



これらの情報は、水揚げから小売販売店まで伝達されることになっている。これによりIUU漁業(IUUとはIllegal/Unreported/Unregulated 違法・無報告・無規制の略)を抑止できるうえ、販売側も消費者も、この情報に基づいて、持続可能性を意識した消費の選択ができるのだ。

実は、日本にはまだ残念ながらこのような規制がない。したがって現段階では、どんな水産物を口にしているのか、流通の途中でIUUと呼ばれる違法、無報告、無規制の漁業による水産物が混ざっていても、消費者は知るすべがない。

とはいえ、ようやく今年になり、安倍首相が施政方針演説において初めて水産行政の抜本的改革に触れ、「漁獲量による資源管理」が盛り込まれた。これを受け、6月には水産庁が革新的な水産政策改革を発表した。

漁獲上限を定めるTAC魚種を、現在の8種から10数種に増やし、全漁獲の80%相当をカバーする値まで増やすことなどが明示された。ようやく水産行政に改善のめどが見えてきた状況にあり、これは称賛に値する大きな前進の一歩である。

文=井植美奈子

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