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2018.09.18 15:00

大手企業が知るべきスタートアップの「流儀」とは 12月、フィンランドへ「Slush」ツアー開催

「Slush 2017」の様子。音楽ライブのように派手な演出も特徴の一つだ。(C) Kai Kuusisto

「Slush 2017」の様子。音楽ライブのように派手な演出も特徴の一つだ。(C) Kai Kuusisto

いまやスタートアップ全盛。大手企業でも、「スタートアップとの協業を模索せよ」といったミッションを背負っている人が少なくないのではないだろうか。

誰でも起業できる時代。それでも起業にはリスクが伴い、覚悟が要る。

「何か一緒にできませんか」「まずはご挨拶でも」「意見交換がてら」「一度見学に」――。 こんな気軽な打診が、もしかしたらスタートアップのマナーに反しているかもしれない。 あなたは、果たしてスタートアップの「流儀」をわきまえることができているだろうか。

フィンランド「Slush」ツアー参加募集
DMM.make AKIBA×電通×Forbes JAPAN

スタートアップイベントは世界で数多あるが、その中でも毎年フィンランド・ヘルシンキで開かれる北欧最大級のスタートアップの祭典「Slush」はここ数年、独特の盛り上がりを見せている。

今年の12月に開かれるSlushを視察するツアー「Dig up Seeds Tour」をDMM.make AKIBAと電通が企画、参加者を募集している。事前勉強会や現地視察、ミートアップなどを経て、スタートアップとのなめらかな関係を築くためのツアーだ。Forbes JAPANもメディアパートナーとして連携、現地レポートを発信する。申し込み・問い合わせは事務局(digup@dentsu.co.jp)まで。 

このほど、DMM.make AKIBAで開かれたプレイベントから、Slushの魅力をお伝えしたい。

フィンランドが「熱い」理由

去年のSlushの参加者は約2万人。2600社のスタートアップ、1600人以上の投資家が参加した。ジャーナリストも600人が来場し、メディアの注目度も高いイベントである。

プレイベントにはフィンランド大使館商務部の田中浩一上級商務官が登壇。 「フィンランドではいまやスタートアップ、オープンイノベーションが経済戦略の大きな柱になっています。政府の方針で社会システムのデジタライゼーションを推進していて、スタートアップはその原動力です」と話した。



田中氏によると、十数年前にフィンランドを代表する企業であるノキアが携帯電話を主力にしていた頃は、フィンランドでも大企業中心のR&Dエコシステムを展開していた。2007年以降、グーグルやアップルがスマホで新しい経済圏を確立し、インフラが整ってきた頃から、ノキアの社員が個人企業を始めたり、モバイルゲームで成功する会社が出てきたりして、どんどんスタートアップカルチャーが盛り上がってきたという。

モバイルゲームの世界で「Angry Birds」シリーズを手がけたロビオ・エンターテイメントや、スーパーセルが大成功し、彼らが同様のスタートアップの支援を始めたことで、民間のスタートアップ支援が整ってきた。

Slushは08年にヘルシンキの起業家たちが交流の場として少人数で始めたイベントだった。11年に地元アールト大学の学生たちが主体として運営するようになり、投資家やメディアを巻き込んだ大イベントに成長させた。14年にノキアがマイクロソフトに買収されたこともあり、よりスタートアップ志向が高まっていった。

田中氏は参加者に「フィンランドなど北欧は、付加価値の高いものを作って海外に輸出するという、日本と近い産業構造になっている。日本企業にはフィンランドをゲートウェイにして、どんどんEUに進出していただきたい」と呼びかけた。

数多あるスタートアップの祭典、なぜSlushか 

世界最小のIoT・ウェアラブル用モジュールによるプラットフォームビジネスを展開する16Labの木島晃代表は、自らスタートアップを率いる立場から、「世界中のあらゆるスタートアップイベントのなかでSlushが一推し」と語った。



「イベントでは来場者数も重要だが、参加者の属性や、マッチングの精度も大事。お祭り的なイベントも多いですが、Slushは世界中から投資家が集まりますし、実際に色々な案件に繋がっています。会場で行われる個別ミーティングのクオリティが随一ですね。日本のスタートアップはもっと参加するべきです」と木島氏。

オープンイノベーションやスタートアップ支援に積極的に取り組むデンソー新事業統括部の井上明・共創推進課長はこう語る。

「自動車業界は100年に1度の大変革を迎えています。勝つか負けるかではなく、生きるか死ぬかの覚悟で、大企業としてスタートアップとの連携を模索しています。幅広い技術領域、グローバルかつ高品質、長い歴史で培ったイノベーションマインドというデンソーの強みとスタートアップの強みをどう合わせていくかが問われています。有望なスタートアップを見出し、丁寧に事業部門との個別面談に落としていくのが重要です」。



デンソーはフィンランドのベンチャー、マース ・グローバルへの出資を決めた。交通機関を組み合わせたルートの探索や予約ができるWhim(ウィム)という決済アプリを手がけるスタートアップだ。

世界で戦うスタートアップ企業を生み出すプログラム、「J-Startup」をスタートさせた日本貿易振興機構(ジェトロ)イノベーション促進課の伊藤吉彦氏は、「VOCA(Volatility=変動性・不安定さ、Uncertainty=不確実性・不確定さ、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性・不明確さ)の時代だからこそ、北欧から学ぶことは多いはずです」と話す。



伊藤氏は「北欧のイノベーション力は世界でもトップクラス。北欧で人、アイデア、お金がぐるぐる回る仕組みができています。なかでもSlushは世界有数のスタートアップの祭典としてブランド化されています。昨年参加した日系のスタートアップからは、平均60件のビジネスコンタクトがあったと聞いています。有望なスタートアップに確実にリーチできるはずです」と強調した。

実は迷惑? スタートアップへの「表敬訪問」

登壇者同士のパネルディスカッションでは、大企業とスタートアップのマインドの違いが主なテーマになった。



「日本企業によくある『日本発、世界へGO』という、まずは日本、次は世界、という感覚はグローバルではあまり聞いたことがない。そもそも最初からグローバルベースで起業し、スタッフは多国籍、デイリーのオペレーションも英語でやっているケースが多いのではないでしょうか」と問いかけたのは、16 Labの木島氏。「スタートアップはあらゆる業務を一人何役もこなしていて、それなりに大変。ディスカッションは直接会う方が効率的ですが、事務連絡程度であれば直接会って話さなくていいことも多いのではないでしょうか」 

本ツアーを担当するDMM.make AKIBAエヴァンジェリストの岡島康憲氏はこう語った。「いま日本企業が中国・深圳によく行っています。ただの『表敬訪問』ではなく、スタートアップとのコミュニケーションにおいて、獲れ高を想定して実のあるディスカッションができるかが重要ですね」



デンソーの井上氏は、「スタートアップと一緒に仕事をすると、文化の違いを認識し、マナーを身につけて臨まねばならないことがわかります。大手企業にも『このままいくと死んでしまうのでは』という危機感、飢餓感、課題感が重要。それを体現できる企業ほど、スタートアップとの協業はうまくいくのではないでしょうか」と語った。

「なめらかな関係」づくり、新ビジネスへ道筋

ツアーには充実した学びに向けての「事前勉強会」と「Slush視察」、「ミートアップ」、そして帰国後の「報告レポート」も含まれる。スタートアップの流儀を学び、なめらかな関係が築けるだけではなく、ビジネスチャンスも無限大である。

なぜ電通とDMMが本ツアーを主導するのか。 「『すべての作り手のためのプラットフォーム』を掲げるDMM.make AKIBAでは、革新的なプロダクトを作って急激な成長を目指す企業を応援したい。スタートアップと協業したいという大手企業は増えていますが、関係がギクシャクしてしまって、結果うまくいかないことがあります。大手企業と向き合っている電通の力を借りて、オープンイノベーションの現場を学ぶツアーを企画しました」と岡島氏。

電通はこれまで、大手企業だけでなく様々なスタートアップ企業のブランディングやマーケティング、コミュニケーションを担い、CMO的役割を果たしてきた。またオープンイノベーションスペースやベンチャーキャピタルの運営も行う。

電通ソリューション開発室の古川裕子クリエーティブ・テクノロジストは「これまで電通がスタートアップの支援をしてきた経験から、大手企業がベンチャー企業との文化のズレを埋め、一緒に『なめらかな関係』を築くことが重要だと思っています」と語る。実際に協業や出資、参加企業同士の連携、新ビジネスの創出につながることを狙う。



ツアーの参加費用は97万2,000円を予定。 申し込み・問い合わせは「Dig up Seeds Tour」事務局(digup@dentsu.co.jp)へ。

文、提供画像以外の写真=林亜季

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