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2018.09.19 08:30

先延ばしをやめた時に始まった、原点回帰からの快進撃

RICCI EVERYDAY創業者 仲本千津

RICCI EVERYDAY創業者 仲本千津

目まぐるしいスピードで変化し、複雑化する世界。数年前に思い描いた自分の将来像もあっという間に時代遅れになる。自らの本質へと近づく転身とは何か──。


仲本千津は2015年にRICCI EVERYDAYを創業した。同社は、原色を大胆に使った、色鮮やかなアフリカンプリント布のバッグをウガンダで生産し、日本で販売している。デパートの催事場から火がつき、エスニックファッションブームを追い風に、生産が追いつかないほどの人気を誇る。

RICCI EVERYDAYには重要なミッションがある。ウガンダのシングルマザーや元子供兵らに地元で雇用の機会を創出し、新しいビジネスの担い手を育てることだ。

大学院で平和構築やアフリカの紛争問題などを研究していた仲本。NPO法人のTABLE FOR TWOでインターンをした。

事務局長の小暮真久に学んだのは、対症療法的な援助よりも持続可能なモデルをつくる大切さと起業の面白さだ。卒業後の進路として、アフリカのNGOに興味もあったが、まずは「地に足をつけたビジネスを学ぼう」とメガバンクに就職した。

配属先の法人営業部では、「カルチャー」に面食らった。ミスは絶対に許されず、個々人のクリエイティビティは殺される。「資金が潤沢にあるところに、さらに融資の話をもっていき、足りないところには貸さない。今まで自分がやってきたことと真逆に進んでいる気がしました」。

仕事帰りにクラブに行って憂さを晴らすという日々が終わったのは、11年。東日本大震災で漠然と自分の死を考えるようになった。「死ぬ時に後悔したくない。やりたいことを先延ばしにするのはやめようと思いました」。

2年半勤務した銀行を退職し、アフリカ農業支援のNGOに入職。すぐにでもアフリカに行きたかったが、2年間日本で勤務しながら、夜はエチオピアの羊革バッグを製造販売するandu ametでインターンをし、ビジネスについて学んだ。

念願のウガンダ赴任が決まったのは14年。ウガンダは気温も食事も人も合った。

「ここなら長く住んでビジネスができそうだ」と思っていた仲本がNGO業務の傍ら、近所の市場で見惚れたのが、アフリカンプリントの布だった。「この布でバッグを作ったらどうだろうか」 閃いたものの、肝心の作り手が見つからない。仲本は紹介されたシングルマザーを雇って職業訓練学校に通わせ、裁縫の技術を身につけてもらうことにした。

それをきっかけに職業訓練校の知り合いや別のシングルマザーがジョインし、半年後には日本でも販売できるサンプルができるまでになった。さらに、その数カ月後には、実家の母の地道な販売活動で売り上げは軌道にのった。

「それでも起業一本にする決断がなかなかできなかったのですが、最後は彼女たちの声に押され、腹を括りました」 

現在、バッグ生産の技術は、元子供兵の職業訓練プログラムにも導入され、就労自立にも役立てられている。「ブランドを立ち上げたら終わりではなく、ウガンダ以外の国でも持続可能な支援の形を模索していきたいと思っています」

仲本千津の転機

・大学院生の時、TABLE FOR TWOのインターンとなり、小暮真久に出会う。
・東日本大震災で、新卒で入社した銀行を退職。アフリカ支援のNGOに入職する。
・ウガンダでシングルマザーたちと出会い、起業した。


仲本千津◎RICCI EVERYDAY創業者兼COO。1984年生まれ。一橋大学大学院卒。銀行の法人営業を経て、国際NGOのウガンダで駐在。アフリカンプリントの布地を使ったバッグの企画・製造・販売を2015年開始。

文=フォーブスジャパン編集部、飯島裕子 写真=小田駿一

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