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2018.09.27 08:00

世界一に挑む! 日本発日本育ちのイノベーション

今年、日本のスタートアップ・シーンにおいて大きな出来事となったメルカリのIPO(新規株式上場)。「野茂になる」日本発世界スタートアップとして期待される企業はまだ他にもある。


「世界の顧客数は200社以上。この2年間は長かった。マラソンゲームのようだった」
 
日本生まれ、シリコンバレーに本社を構えるスタートアップとして、データ保存ソフトを開発・販売するクラウディアン。CEOのマイケル・ツォー(48)、そして共同創業者の太田洋(60)はそのように話す。
 
日本発世界スタートアップの先駆者、開拓者として「(ロサンゼルス・ドジャースなどで活躍した)野茂英雄にしたい。野茂になる企業がある」と投資家の産業革新機構・安永謙ベンチャー・グロース投資グループ・マネージングディレクターが2014年からそう言い続けてきた企業。それがまさに今、実現に近づいているという。「現在、グローバルにこれだけ収益を上げている企業はない」(安永)。

クラウディアンは、「CLOUDIAN HYPERSTORE」というオブジェクトストレージ製品が主力。数十テラバイト程度の小規模からはじめ、データの増加に合わせてペタバイトを超える大量のデータを安全に保存できる記録装置をつくるソフトウェア。汎用的なサーバを多数使い、同ソフトウェアが統合制御し、ひとつの巨大なストレージシステムを構築。複数のサーバ間・データセンター間でも、自動複製・分散配置により堅牢にデータを保護し、大量のデータを経済的、かつ信頼性高く、長期間保存できる点が特徴だ。

「多くの企業は、機密保持、処理性能などの理由で、全てのデータをクラウドサービスに預けることができない。さらに、IoT、人工知能(AI)などにより、膨大なデータ管理が必要になるなか、従来のプラットフォームでは対応が難しい。我々の経済性、拡張性、使いやすさ、クラウドとの統合がそれを解決する」(ツォー)
 
同社は18年3月、米IT機器大手のシスコシステムズが出資する米投資会社デジタルアルファから2500万ドル(約27億円)の資金調達を実施。また同時に、同社から、顧客がソフトウェアを導入するためのファイナンス用資金として最大1億ドル(約108億円)の調達も行った。

「2年で売り上げは10倍。顧客数も4倍増。ただ、グローバル市場では後発企業として参入したため、簡単ではなかった」
 
なぜ、クラウディアンは先行者利益がない中でも、成長が可能だったのか。ここに「日本発世界のイノベーション」のヒントが垣間見える。

同社が「HYPERSTORE」をリリースしたのは11年。最初の製品販売開始から2年半は、日本企業向けに展開。ニフティ、NTTコミュニケーションズ、NTT東日本、石川コンピュータ・センター、東レシステムセンターなどに採用が続いた。

「本当に日本企業に鍛えられた。日本の顧客は品質にこだわり、徹底的に検証する。品質改善に向けた問題解決能力に優れ、365日24時間稼働するシステムをつくるための信頼性や安定性、品質の技術は日本ならでは。製品購入後のサポートにも日本流の細かな対応が、世界中の顧客から高い評価を得ている。大手中心の保守的なストレージ製品市場の後発企業でありながら、『製品の質』が違いとなり、既存顧客からの追加オーダーはもちろん、競合企業とのコンペにも9割近い勝率だ」
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文=山本智之 写真=ヤン・ブース

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