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その一方で、彼らは顧客である日本企業に全エネルギーを注ぎながらも、「グローバル展開」を常に視野に入れていた。そして14年、産業革新機構などから投資を受けて海外展開を始めた。そこで生きたのがシリコンバレーでスタートアップを経験してきたツォーの経営手腕だ。

「成功要因は、営業やマーケティングにおいて、現地のストレージ業界のプロフェッショナルに任せ、日本で鍛えた製品を完全に欧米流で展開したことが大きい」

ツォーと太田は01年、前身となるジェミナイ・モバイル・テクノロジーズを日本で創業した。

「写メール」の開発者としても知られていた太田とツォーが写メールで課題となった大容量通信処理の問題で意気投合し設立。事業は順調に成長し、09年にIPOを予定していたが、直前のリーマン・ショックの影響で会社が倒産危機に。社員の3分の2が会社を去ったという。

それを乗り越えたチームがいる会社だからこそ、ツォーは「企業文化」の重要性を強調する。そして、彼らが大事にしているコンセプトが2つある。

1つが、皆が顧客に対して全方向でオーナーであることを意味する「トータルコンプリート・オーナーシップ」。そして、2つ目が「ハングリー(貪欲であること)、ハンブル(謙虚であること)、オネスト(正直であること)」の徹底だ。会社一丸となり、長期的な視点で顧客第一を続けている。

クラウディアンは17年12月、AI処理を高速に行うGPU(画像処理半導体)を内蔵し、カメラ接続、LTE/Wi-Fi通信機能を搭載する屋外・屋内用小型装置「CLOUDIAN AI Box」を新たに開発。まずは日本市場で展開する。そして、「HYPERSTORE」は、米国・欧州を中心に世界での販売を強化する。

「今後は、オブジェクトストレージ分野の世界一を目指す。そこで鍵を握るのがAIとの連携。『AI Box』を使い、データが生まれる現場(エッジ)でリアルタイムにAI処理をする。同時に分析結果や学習用データをデータセンター側に持続的に集め、そのデータを『HYPERSTORE』に大量保存し、AIの判別精度を高める再学習サイクルを構築する。それにより、AI開発・実行環境もシンプルで経済的になる」

スピード感を持ち、「絶対に必要だ」と皆が気づくタイミングで市場に製品を出し、磨いていく。日本産日本育ちのイノベーション、世界へ。その挑戦がさらに加速していく。



太田 洋◎クラウディアン代表取締役社長兼共同創立者。Jフォン/ボーダフォン・ジャパン在籍時代、「写メール」や「J-Skyステーション」「J-ナビ・サービス」など、いくつもの「世界初」を開発・導入。

マイケル・ツォー◎クラウディアンCEO兼共同創業者。マサチューセッツ工科大学(MIT)コンピュータサイエンス修士号、電気工学博士号を取得。検索エンジンのパイオニアのInktomi、インテルを経て、現在に至る。

文=山本智之 写真=ヤン・ブース

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