ビジネス

2018.09.21

差ではなく「違い」 違いをつくれば誰も追いつけない

オカムラ代表取締社長 中村雅行

「脱メーカー? いや、ものづくりの看板は下ろしませんよ」

家具メーカーのオカムラは、今年4月、創業以来の社名だった岡村製作所から「製作所」の3文字を取り、カタカナ表記へと社名を変更した。オカムラは近年、家具製造だけでなく、オフィスや商業施設の空間づくりを行うトータルソリューション事業に力を入れている。社名から製作所を取ったのは、メーカーからの脱却を意図してのことなのか。そう水を向けると、代表取締役社長の中村雅行は冒頭のように力強く否定した。

実は社名変更が検討されたのは、今回が初めてではない。オカムラの創業は1945年。海軍の技術者たちが設立した飛行機製造工場が出発点だった。海軍出身者には英語を話せる人が多い。そのアドバンテージを生かして、戦後は横浜に駐屯していた米軍向けに家具をつくり始めた。

創業当初からターゲットは世界。その結果、国内の社名は岡村製作所、海外での社名はOKAMURA CORPORATION、ブランド名はオカムラというバラバラの状況が生じていた。

「わかりにくいから統一したいという話は以前にもありました。ただ、昔は株券が紙でした。社名変更すると株券を回収して刷り直すのに数億円かかるといわれて、断念した経緯があります。今回、採用のイメージ戦略も考えてようやく社名変更に至りましたが、製作所を外したといって、ものづくりをやめるわけではない。ものづくりへのこだわりはいまも同じです」

ただ、中村のいうものづくりは、職人的な世界観とは趣を異にする。重視するのは、「新しいコンセプトのものをつくること」。どちらかといえば生産現場より市場に近い発想だ。

中村自身、エンジニアとして常に新しいコンセプトの商品を開発してきた。オフィス家具開発部長だった25年前、オフィスのデスクはスチール製が主流だった。ただ、役員クラスになると高級な木製デスクへと替わる。中間管理職が木製を使おうものなら、「分不相応」と白い目で見られた。

スチール製の手軽さと、木製の高級感を兼ね備えたデスクをつくれば、ちょうどいいのではないか─。

中村は、スチールのフレームにメラミン材の天板を組み合わせた木金混合デスクを開発。これが飛ぶように売れて、デスク市場に新たなカテゴリーを誕生させた。

デスクならデスク、イスならイスというように、それぞれ別々に開発されてきたオフィス家具を、同じコンセプトのもとに開発。シリーズ化してコンセプトカタログをつくって販売することを考えたのも中村だった。
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文=村上 敬 写真=間仲 宇

この記事は 「Forbes JAPAN 100通りの「転身」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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