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メディカルノート取締役CFO 高岡美緒

目まぐるしいスピードで変化し、複雑化する世界。数年前に思い描いた自分の将来像もあっという間に時代遅れになる。自らの本質へと近づく転身とは何か──。


2017年2月。高岡美緒は8年勤めたネット証券大手、マネックスグループ執行役員新事業企画室長の職を退き、休職に入った。半年後に高岡が復帰したのは、長年歩んだ金融畑ではなく、意外にも医療系スタートアップ、メディカルノートだった。

しかし、振り返れば、今の仕事にはなるべくしてたどり着いたと言える。

アメリカ育ちの高岡は、英ケンブリッジ大学で物理学を専攻。常に物事の本質を考える癖がついた。1999年に卒業後、マネックスグループに参画するまで複数の外資金融でキャリアを積んだ。金融で社会の本質を知ることができると考えたからだ。

仕事の楽しさを知ったのは、新卒で入社して数カ月後。メールの印刷やコーヒーの買い出しなど、雑用ばかりだったのが、初めて500億円もの案件を任された。

「間違えたら大きな損失です。焦りました。でも、任された嬉しさもありました。終わった時は涙が止まりませんでした」

小さな成功体験が自信になり、周りの信頼につながった。「仕事をすればするほど評価されて、楽しくて仕方なかったです」

第一子が生まれた08年、育休復帰後1カ月目で勤務していたリーマン・ブラザーズが倒産した。高岡は衝撃を受けた。「努力しても報われないことがあると知りました」20代との違いは、子供がいたことだ。小さなことに動じず、物事を大局観で考えられるようになったという。

高岡は、スティーブ・ジョブズの『コネクト・ザ・ドット』という言葉が好きだ。「点は先を見通してつなぐことはできず、振り返ってつなぐことしかできない。点がつながると信じること。何かを信じ続けるとつながる。それが今、とても納得できます」

前の会社が倒産後、マネックスに入社。新規事業やベンチャー投資を担当した。投資に必要なのは社会の本質を見抜くことだ。今の日本に何が必要か、5年後から逆算する。そうすると、金融やヘルスケアという業種の垣根がなくなった。

「メディカルノートを通して実現したいのは、誰もが納得できるヘルスケアを受けられる環境です。病気になる前のちょっとした不安から、いざという時まで、気軽に信頼できる医師に相談できる。社会の誰もがそのような安心感を求めています」

復帰する前、子供との時間を持つため仕事をセーブするか、フルコミットでスタートアップに入るか迷った。選んだのは後者の道だ。「子供達には、ママは離れていても、人のための仕事をしていると理解してほしい」と思っていた。

今も子育てと仕事の両立は大変だ。送り迎えを忘れてしまうこともある。「もう、ママは忘れっぽいんだから」。次男と長女が口をとがらせると、長男が言った。

「ママは、みんなが元気になるための仕事をしているんだから、ちっちゃなことで怒ることはないよ」。「伝わっているんだ」と思うと、心から嬉しかった。

高岡美緒の転機

・大学時代に物理学を専攻。「本質とは何か」を考えることが習慣となった。
・2008年に長男出産。子供ができて、大局的な視点で考えるようになった。
・2017年マネックスグループを退社し、メディカルノートへ


高岡美緒◎メディカルノート取締役CFO、Arbor Ventures Partner。1999年、英ケンブリッジ大学自然科学部物理学科卒業。外資投資銀行を経て、2009年にマネックスグループに入社。執行役員を務めた後、17年9月より現職。

文=フォーブスジャパン編集部、飯島裕子 写真=小田駿一

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