次世代が思いがけず出会う、日本酒の新しいカタチ

辰馬本家酒造のmuni(ミュニ)

兵庫県西宮市で創業以来356年の歴史をもつ清酒メーカー、辰馬本家酒造。その16代目社長である辰馬健仁氏は昨年の夏、イビザ島(スペイン)にいた。

連夜のクラブやパーティなどにぎやかなナイトライフで知られるこの島で日本酒がさかんに飲まれているという評判を聞き、リサーチのための訪問だったというが、驚いたのは日本酒をオーダーした際「ストレートorカクテル?」と聞かれたこと。いままで「燗or冷で?」と聞かれたことはあっても、カクテルで日本酒を飲むとは……目からウロコが落ちた気分だったという。

日本酒の国内年間出荷量はピーク時170万キロリットルを超えていたが、現在はほかのアルコール飲料などとの競合により60万キロリットルを割り込む水準まで減少している(農林水産省調べ)。

若年層のアルコール離れも取りざたされる現在、日本酒のマーケットをどのように拡大し、また世界へ発信していけばいいのか。悩んでいた辰馬氏だったが、このイビザでの経験をひとつの種子と捉え、今年7月には新製品「muni(ミュニ)」を発表、子会社から発売へと結実させた。

「muni」は日本酒をカクテルベースとして楽しめるよう、酒精を強化してアルコール度数を27度まで高めたSAKEリキュール。スピリッツのようなドライな味わいでありながら米の旨みをしっかりと感じることができ、一度口に含めばこれが日本酒ベースだとすぐわかるのだが、見ただけではまずわかるまい。というのはこの鮮やかなブルーの色とポップでトロピカルなボトルのデザインは、従来の日本酒のイメージからは遠いからだ。

製品のプロデュースを手がけたのは、人気アーティストきゃりーぱみゅぱみゅの舞台美術を手がけることでも知られるアートディレクター、増田セバスチャン氏。原宿を起点とする日本のKAWAIIカルチャーの旗手である増田氏が「もっと自由に遊べる唯一無二のSAKE」をコンセプトに、「ミュニーニャ」「ミュニーラ」「ミュニティー」などオリジナルカクテルのネーミングまでかわいく、ポップに仕上げることにこだわった。

この「muni」が映えるのは、東京のスタイリッシュなナイトシーンだろう。いま日本酒を積極的に飲まない人や、飲んだことのない人が思いがけずこれらのカクテルに出会い、「え、なにこれ日本酒なの。意外〜。でもおいしいね!」と言ってもらえたら、それは日本酒の未来市場拡大への一助となるに違いない。

<muni>
度数:27度
容量:720ml
価格:2800円(税別・希望小売価格)
お問い合わせ:六自(http://www.muni.fun)


KAMIKAZE HOUSE〜夜な夜なエクスパットが日本酒を飲み干す

オフィス街の一角で、ビジネスマンの止まり木として愛されているバー「KAMIKAZE HOUSE」。クラフトをはじめ30種揃うビールが一番の人気だが、エリア柄、エクスパットなどの外国人客も多く、彼らの間では通称「SAKE BOMB」なる日本酒カクテルが流行中。ビールにお猪口ごと落とした日本酒をショットガンのようにクイッと飲み干し、神谷町の夜は大いに盛り上がる。


「ニシンのトマトソース漬け バゲット添え」600円(税別)などフードメニューも多彩。

住所:東京都港区虎ノ門5-2−5
電話:03-6450-1097
営業時間:月〜金11:45〜14:00、17:00〜翌2:00、土17:00〜翌2:00定休/日曜

photographs by Yuji Kanno | text and edit by Miyako Akiyama

この記事は 「Forbes JAPAN 100通りの「転身」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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