往年の名車の名を冠した「スポーティー・ラグジュアリーカー」──Ferrari GTC4Lusso T

フェラーリ GTC4Lusso T

大志を抱いた若者がガレージで創業した―。いまどきのシリコンバレーにある企業のようだが、フェラーリの前身となるレーシング・チーム「スクーデリア・ フェラーリ」も、1929年に北イタリアの小さ なガレージから生まれた。

創業者であるエン ツォ・フェラーリは、鬼才のエンジニアとして知られるヴィットリオ・ヤーノと“空飛ぶマントヴァ人”と称された名ドライバータツィオ・ヌボラーリを得て、レースでの勝利を重ねていく。

やがて第2次世界大戦後の1950年代から市販車の生産を始め、その歴史の中でも金字塔といわれるのが「250」シリーズだ。62年にシリーズの最後を飾る最高級モデルとしてイタリア語で「贅沢」を意味する車名を掲げる「250GTルッソ」が登場する。

美しいフォルムと上質なインテリアはいま見ても色あせない。以降、豪奢な内外装を持つボディのフロント・ミドにパワフルなエンジンを搭載するのが、フェラーリの最高峰モデルの流儀として定着した。

そしてこんにち、フェラーリの最高峰を担うべく名車“Lusso”の名を冠して世に送り出されたのが、「GTC4Lusso」である。フェラーリの伝統であるスポーティネスを担保するのは当然だが、加えて、4人乗りで長距離のドライブに対応し、日常的に愉しめるフェラーリであることを謳う。

実際に、ドライバーズ・シートに滑り込むと、上質なレザーに囲まれた空間に、大型タッチスクリーンを備える最新のデジタル・コックピットが目に飛び込む。

ターボ化された3.9リッターV8エンジンは、インターナショナル・エンジン・オブ・ ザ・イヤーを獲得するなど、世界的に評価の高いユニットであり、町中をゆったりと流すようなシーンでも驚くほど運転しやすい。

もちろん、ひとたびアクセル・ペダルを踏み込むと、次の刹那には3.9リッターV8エンジ ンから610CV/760Nmもの強大な出力がデリバリーされて、圧倒的な加速感で異世界に連れていってくれる。

ラグジュアリーであることを公言し、それを日常で体験できる。そんなクルマが存在するいまの時代に、感謝すべきだろう。



Ferrari GTC4Lusso T

DATA

駆動形式 : 後輪駆動(4輪操舵)
全長 : 4922mm
全幅 : 1980mm(サイドミラー含まず)
全高 : 1383mm
最高出力 : 449kW(610cv)/7500rpm
価格 : 2970万円(税込み)
問い合わせ : フェラーリ・ジャパン コミュニケーション(03-6890-6200)

フェラーリの最高峰モデル“スペチアーレ”。 最新版の「488 Pista」で得られる最高の体験とは?

フェラーリには、2つの最高峰が存在する。ひとつは、フロント・ミドにエンジンを積む後輪駆動モデルだが、台数を限って生産される“スペチアーレ”なる記念モデルが存在する。その歴史 をひもとくと、初の市販車となる「250」でレースに参戦するために生み出された「250GTO」 に端を発し、「288GTO」「F40」「F50」といった系譜を生んだ。

その最新版が「488 Pista」である。アルカンターラに覆われたシートに滑り込みスタートボタンを押すと、ターボ付き3.9リッターV8ユニットが低い唸り声を上げて目覚める。3500rpmを超えるあたりからエモーショナルな排気音が周囲に轟き、コーナリングでは、わずかなきっかけを作る程度で素直に鼻先を曲げていく。



720cv/770Nmもの高出力エンジンを積むが、存外、手の内に収まる感覚で制御しやすい。顧客に最高の体験を提供することこそが、フェラーリが一貫して提供してきた価値なのだ。

text by Yumi Kawabata edit by Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN 100通りの「転身」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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