ビジネス

2018.09.22

わずか5坪の店に外国人が殺到 インバウンド戦略の成功例

渋谷のABOUT LIFE COFFEE BREWERS。駅から徒歩10分の立地ながら、訪日観光客を中心に賑わっている

2年後のTOKYO2020に向けて、各社インバウンド戦略に力を入れつつも、まだまだ成功のロールモデルが少ないのが日本の現状です。そんな中、渋谷の道玄坂に、外国人のお客さんが絶えないお店があります。

その名は「ABOUT LIFE COFFEE BREWERS(アバウトライフ コーヒーブリュワーズ、ALCB)」。わずか5坪の極狭コーヒースタンドです。

お店の前で会話をしたり、写真を撮ったりと、コーヒーを飲む間のひとときを思い思いに楽しむ訪日観光客や日本在住の外国人たち。その様子は「ここは東京?」と思ってしまうほど国際色豊か。イギリス発のカルチャー誌「MONOCLE」、グルメ情報誌「EATER」、そのほかカンタス航空やジェットスターの機内誌など、海外メディアからもたびたび取材されています。

なぜこの小さなコーヒースタンドに、外国人たちが集まってくるのでしょうか? そのインバウンド戦略について聞いてきました。

フラットなコミュニケーションが鍵となる
 
ALCBが海外から注目を浴びるようになったきっかけは、2014年に始めたインスタグラム。海外のお客さんが少しづつ増えてきていたものの、情報発信はまったくの手付かずだったので、とりあえず「インスタを英語発信でやってみる?」くらいの軽いノリで始めたといいます。


インスタグラムのフォロワーは約85%が海外ユーザー。インドネシア、オーストラリア、台湾、韓国の順にフォロワーが多い


「海外のフォロワーを増やすために、オーナーの坂尾と繋がりのあったオーストラリアやNY、北欧などのコーヒーショップや各国のコーヒーギークとの相互フォロー、海外のお店の投稿に“いいね!”するなど、海外とのコミュニケーションを積極的に行いました。その結果、フォロワーの85%が海外ユーザー、フォロワー数は日本のコーヒーショップ(個人店)では2番目に多い4万6000人を獲得するまでに成長しました」

そう話すのはALCBのマーケティング担当の松宮弘樹氏。もともとオーストラリアに住んでいたこともあり、投稿する英語はネイティブ表現、内容やコメントもなるべくフレンドリーを心がけ、グローバル感覚のコミュニケーションを大切にしているといいます。

さらにALCBは、店舗におけるオフラインのコミュニケーションにもこだわりがあります。

「ALCBのバリスタは、お客さんが外国人であろうと日本人であろうと、常にフラットでフレンドリー。日本の飲食店は過剰接客の傾向がありますが、外国人が気軽に立ち寄りたくなるのは、『調子はどう?』『久しぶりだね!』というような、友人と話しているかのような気軽な雰囲気。コーヒーのクオリティはもちろんですが、コミュニケーションの心地よさも、お店のファンになったり、高いレビューを残してくれるキッカケになっていると思います」

撮影のスポット化や動きのある写真がポイント


お店の前のベンチに座って写真を撮るのが、訪日外国人たちの定番スタイル

コミュニケーションの他に、海外のフォロワーや来客を増やすきっかけとなったのは、“お店の前のベンチに座って写真を撮る”ことが定着したこと。当初、バリスタがお店の前を定点観測のように毎日撮影してインスタグラムにUPしていたのを、いつしかお客さんが同じように撮影するようになり、撮影スポット化していったといいます。

「お店の前で撮影した投稿に、友達同士がタグを付けあい、“東京へ行ったら、ここはマストチェック!”というようなコメントが増え、自然な形で広がっていきました。それを見たファッション誌から、撮影のロケ場所として使いたいという依頼もくるようになり、さらに拡大。“インスタ映え”と言われるのは嫌なんですが(苦笑)、わかりやすい撮影スポットを設けることで、来客を促せるということは事実です」
次ページ > 独自の勝ちパターンを見出す

文=国府田淳

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事