ところが、映画「スカイスクレイパー」の舞台となる「ザ・パール」というハイテクビルは、高さが1066m、階数は240階。軒高でブルジュ・ハリファの1.5倍の高さを誇る。1066mといえば、1kmだ。そんな建物をつくるのが果たして可能かどうかはわからないが、まずは、この作品の見どころは、その天を突く摩天楼の偉容だ。
香港の九龍サイドの海側にそびえ立つザ・パール、建物上層部(150階辺り)には巨大なタービンが設置され、風力発電でビル全体に電気を供給する。100階部分からの吹き抜け30階分には、植物が生い茂る空中庭園がつくられ、人々が自然と共生する空間を提供している。このあたり、環境にも配慮したものとなっている。
(c) Universal Pictures
そして、最上部には、まさに大きな「パール」が載っており、ここは360度が見渡せる展望台となっている。この展望台からの眺めがスペクタクルだ。
高度な映像技術を駆使して、まるで地上から1kmの高さで、宙に浮いているような気分で、香港のパノラマを堪能できるようつくられている。まさに世界を見下ろす神の視点のような眺めは、スクリーン上とはいえ、なかなかの得難い視覚体験だ。
(c) Universal Pictures
もちろんビル内には、ショッピングモール、映画館、高級アパートメントなどが併設されており、さながら中空へと広がる未来都市が現出する──はずだった。というのも、本格オープンを前に、この最新鋭のセキュリティシステムに守られたザ・パールに凶悪なテロリストたちが侵入するからだ。
そこから、作品は一気にディザスタームービー(災害映画)の様相へと加速していく。監督を務めたローソン・マーシャル・サーバーによれば、当初から「ダイ・ハード」(1988年)と「タワーリング・インフェルノ」(1974年)を掛け合わせた作品を考えていたという。