仕事や実生活に役立つ「趣味」とは何か?

「フィンテックという新しい産業を育てること」を使命に日本銀行から金融ベンチャーへと転職した神田潤一氏。手堅いキャリアに隠された柔らかな一面を覗かせてもらった。


日本銀行に23年間在籍していましたが、2015年に金融庁に出向し“フィンテック”と出合ったことを契機にマネーフォワードに転職。今年3月、「仮想通貨が通貨として当たり前に使える社会」を目指すために新しく設立されたマネーフォワードフィナンシャルの代表取締役社長に就任しました。

金融庁ではフィンテックという新しい産業を推進していくための調査や政策づくりに取り組んでいました。フィンテックを初めて知ったときというのは、「金融業界の歴史が変わる瞬間に立ち会えるかもしれない」と非常に興奮しましたね。
 
忘れられない思い出は、出向して約1カ月後の「Fintech協会」設立イベント。会場には100人くらいのベンチャー起業家たちがビール片手に談笑していたのですが、私が金融庁の人間として壇上に上がった途端、会場が静まり返ってしまって。たぶん「敵か味方か」という警戒心もあったのでしょう。

それで「金融庁として全力でサポートをします」という挨拶のあと、「この情熱を言葉で理解していただくのは難しいと思うので」と、椿姫の「乾杯」というオペラを歌いました。もちろん最初から歌おうと目論んでいたわけではなく、目の前のベンチャー起業家の皆さんと金融庁との距離を少しでも近づけたかった。

その想いが伝わったのか、割れんばかりの拍手をいただき、立食パーティでも名刺交換の長蛇の列ができて(笑)。最新情報や重要情報も軒並み入ってくるようになりました。
 
歌は昔から好きで、小学生のころから合唱部に入っていて、全国大会で2回優勝した経験もあります。オペラを始めたのは6年ほど前。課題曲は先生と相談しながら決めるのですが、オペラというのは奥が深く、半年くらいではモノになりません。何年も歌い続けて、「あ、ちょっと歌えてきたかな」と思える瞬間がときどきある程度です。
 
魅力は、腹筋や身体全体を使って思い切り声を出すので、すごくスッキリするところ。あと私はいま47歳ですが、この年齢でも練習さえすれば高い音が出たり低い音がうまく響いたり、工夫次第でまだまだ上達できるというのが非常に嬉しいです。好きなオペラ歌手はルチアーノ・パヴァロッティ。艶があるし高い声も出るし、聴いていると楽しい気分になってくる。ああいう風に歌えることを目指しています。
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構成=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

この記事は 「Forbes JAPAN 100通りの「転身」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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